NRG 日本理容技学建設会
 
 『毛利佳正のヘアケア講座』では、公開質問を受け付けています。質問に対する答えは、担当の毛利講師が本講座内でお答え致します。質問は、情報システム部で受け付けます。質問はこちらから→ヘアケア質問受付
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 過去分への移動はこちらから→ 第1回サロンケアの考え方   第2回縮毛矯正前篇  第3回縮毛矯正後編 
 第4回コールドパーマー1  第5回コールドパーマー2  第6回アルカリカラーのケア  追記1   
                                                          
                    薬剤処理メニューにおけるサロンケア
 追記 平成25年1月8日                       ページトップ

 講座の中で「炭酸泉」を使用することがところどころに出てきますが、最近になって炭酸への観点が以前と少し変わったので追記としてお伝えしておきます。
 
炭酸泉とか炭酸水は二酸化炭素が水に溶けているもので、濃度によって炭酸泉、炭酸水と呼ばれます。
 
2年近く使用してきて、このところ大体の感覚的なデータが揃ってきました。
 
矯正において中間水洗で炭酸泉使用と未使用を比べてきたのですが同じお客様で検証しないと結果が見えないので年月が掛かってしまいました。
 
結果から言うと、、、
 
1剤のお流しとなる中間水洗では炭酸泉は使用しないほうが良いだろう!
 
という結論です。
 
炭酸泉はphによるアルカリの中和と残留薬剤の除去としては最適なのですが、オキソ酸であるため多少の酸化力があります。
 矯正の全部ではないのですが、その影響が出てしまう髪質やクセが確かにあります。伸びが頼りない感じになったり、伸ばしにくくなったりなどの体験を通して感覚のデータとしてわかりました。
 
この感覚からするとパーマやアイロンパーマでも炭酸泉の使用は2剤後のお流しで使用するほうがバランスは良いと考えられると思います。
 
炭酸泉はモノエタなどの残留しやすいアルカリの除去にはかなりの効果があることも公の試験機関で証明されています。実際の数値はまだ知らされていませんが、間違いではないか?と思うほどの数値のようです。
 
特にカラーケアにおいては炭酸泉の使用はズバ抜けた効果があるということですね。
 
ちなみに当店では矯正だけして、カラーは他店というお客様が数名います。カラーダメージにおいては差を感じていましたが、感覚的なものだけではなかったようです。
 
一般的な「炭酸」はブームで終わりそうですが、ヘア業界としてはすでに「炭酸泉は常識」という域になってきており、ここ数カ月でその効果として新たな方向性も出てきていますので、興味のある方は取り組んでみてはいかがでしょうか?
 
http://t2sys.info/ 私が使用している炭酸システムです。コストパフォーマンスやポテンシャルは他のメーカーに圧倒的な差を付けているメーカーです。炭酸システム導入ならここ以外に紹介できるメーカーはありません。


 第6回 平成24年12月19日                                  ページトップ  
 アルカリカラーのケア
 今回はアルカリカラー施術に対してのケアをお話します。
 サロンでのカラー施術での主流はアルカリカラーであろうと思われます。そして、ホームカラーもほとんどがアルカリカラーでしょう。
 これらのカラー剤はざっくりと言えば髪のメラニン色素を分解して、酸化染料や直接染料で色味を付けているのですね。メラニンを分解するにあたって様々なダメージ要因があるわけです。
 その為、他の施術(パーマ、矯正など)との関連性が大きくなるのです。
 さて、それではアルカリカラーのダメージの要因を見ていきましょう。大きくは次のように考えられます。
 ※要注意・・・中性カラーや酸性カラーでもオキシ使用でメラニン色素の分解を伴うカラー剤はダメージの差はあれど同じ傾向のダメージを負っています。

アルカリカラーのダメージ

1・CMCの欠損による毛髪の親水化
 アルカリカラーの大きな構成はブリーチ(メラニン色素分解)と染料(酸化・直接)の二つです。これらの成分は毛髪のCMC部分を通って内部に浸透し、コルテックス内部のメラニン色素を分解してリフトUPが進み、さらに染料が酸化重合して色味が付いてきます。
 この際にCMCを壊すことで薬剤の通り道ができるので欠損やラメラ構造の破壊が進みます。元来は疎水性を示す毛髪ですが、CMCの欠損により水分は必要以上に毛髪に入り込めるようになる為、髪は親水性になってくるわけです。
 親水性になった髪はキューティクルがリフトし、剥がれやすい状態になります。また、毛髪内部もCMCで守られていたコルテックスの欠損も起こり始めます。
 黒染めだから大丈夫~!という方も意外にいるのですが、アルカリカラーであればアンダー(メラニン色素)も分解された上に着色されているのでダメージ要因は同じです。
 ちょっと不明なのが薬剤の深度です。今までも色々調べてはいるのですがイマイチはっきりとした感じが掴めていません。リフトUP=髪の透明化ということからすれば明度が低くてもコルテックル全域にブリーチ作用は起こっていると考えられます。パーマ剤のようにリング的な薬剤の浸透領域ではないのでは?と思っています。事実、矯正などをするとアルカリカラー毛はちょっと薬剤が強いだけで芯まで還元されてしまった感じになります。ということは、カラー剤自体が明度とは関係なくメデュラまでは到達しているものと考えられると思います。皆さんも考えてみてください。

2・酸化による不要生成物質
 過酸化水素による「酸化作用」の上にヘアカラーは成り立っていますね。
その酸化によって毛髪強度の要である「シスチン結合」はシステイン酸という物質へと変化します。元のシスチン結合には戻ることは無いのでパーマでもお話しましたように「シスチン結合減少=毛髪強度の低下=ダメージ」となるのです。

3・高アルカリや施術中の加温による不要生成物質
 アルカリカラーはph10~13程度で、リフト力が上がるほどに高アルカリになるのが通常です。ブリーチ剤やハイトーンのカラー剤、ムースカラー剤は活性剤も多く、高アルカリですね。
普通のアルカリカラーでも加温を行うことで反応は高くなります。
 これらによってシスチン結合はアルカリと熱によって「ランチオニン」という物質へと変化します。2のシステイン酸と同様に元のシスチン結合に戻ることはありませんので毛髪強度を下げることになりダメージとなります。

4・残留アルカリ、残留過酸化水素
 カラー剤に含まれるアルカリが毛髪に残留することにより、髪は濡れるたびにアルカリの影響でアルカリ膨潤するようになります。1でお話したことと同じ現象になりますのでダメージにつながりますね。残留過酸化水素については活性酸素による影響がありますが、自分も理解できずにいますので皆さんも調べてみてください。または知っている方は教えてください!(笑)
 さて、こんな感じがアルカリカラーによるダメージ要因でしょう。
ではでは、そのケアを考えてみましょう。

ケア方法
1・CMC補給
 カラーダメージのほとんどはCMC欠損ですのでその補給が有効です!既染部には前処理でCMCを使い、乳化時にはCMCを溶かしたお湯で乳化をします。お湯を張ったシャンプーボールにクリームのCMCを溶かしてカップなどで掛け湯しながら3~5分くらいは乳化させましょう。中途半端な位置で重合している色もCMCとともに引き込まれますので発色と色持ちもUPします。

2・カラー剤による酸化作用
 システイン酸は必要悪です。酸化作用を用いたカラーリングをする以上は避けられません。
最も有効なケアはリタッチでOKなアンダーと色味でカラーを続けることにより既染毛部の再施術を最小限にすることです。自分は既染部への色味補給の90%はシャンプーボールでのトナーによって完了させています。色味を懸命にこだわって施術しても2週間程度でほとんど抜けちゃいますから。。それよりは余計な薬剤を長い時間置いておくことによるダメージを避けることのほうを優先します。

3・加温を避ける
 ランチオニンはアルカリと熱によって生成されますから当然ながら放置タイムは自然放置でおこないましょう。また、ハイブリーチなどハイトーンのカラーリングではランチオニンの生成は避けられません。その為、事後の十分な理解をお客様にしていただくようにカウンセリングできるスキルが必要ですね。ハイトーンは傷みますよ~!くらいではお客様はわかりきっていることなのです。

4・残留アルカリ、残留過酸化水素除去
 残留アルカリに対しては弱酸性シャンプーはもとより軽いバッファー効果のあるトリートメントなどを使用して出来るだけ除去します。パーマ同様ですが酸度の高いものでph調整することはキレート錯体の問題もあるので避けた方が無難でしょう。
 残留過酸化水素に関してはヘマチンによってある程度中和が期待できるので乳化時や流し後に使用すると良いでしょう。

 自分のサロンでは縮毛矯正をするお客様が多いのでカラーとの兼ね合いはちょっと神経質なくらいに考えているかもしれませんね。。。
 ちなみに、、グレイカラーにおいて白髪が染まっていれば良いという方には100%香草カラーで施術しています。特にグレイの場合はカラーする年月が長くなる傾向なので低ジアミンとノンダメージで老化する髪に対応しています。さらに最近はヘナにも再度着目して色々とテストをしています。
 さて、数回にわたるヘアケアの講座はいかがだったでしょうか????
 細かい事が色々とあって難しい印象もあると思いますが、施術を能動的に行おうとすれば徹底した不確定要素の排除が必要です。それを続けてきた結果の現在進行形が今回講座でお話してきたコトです。
 言葉の羅列だと難しく感じることも実際には割と単純な作業ですので良かったら講習など見る機会を作っていただくと良いかなと思います。
 また、講座中に出てくる商材などは質問を頂ければご紹介いたしますね。
 自分もまだまだ知らないことや間違った認識が沢山あると思いますし、「正しい・間違え」は目的に応じて常に入れ替わるものです。一面からの安易な見方ではなく、結果に責任を持てる施術ということを考え続けています。
 すべてはお客様のキレイの為に!
 皆様の努力がお客様の笑顔につながるように祈りつつ講座を閉じたいと思います!!!
 どうもありがとうございました。


 第5回 平成24年10月27日                                  ページトップ
  コールドパーマ編―2
 今回は中間処理と後処理のケアです。(※都合により2剤酸化処理も含んでおります)
 前回の2,3(2剤処理前まで)のプロセスになります。
 中間処理は1剤による還元作用後の処理であり、仕上がりを目指してどのようなケアをするか?という点において、様々な狙いが出てきます。しつこいようですが、還元処理によって必要最小限のダメージにしておくことが一番のケアになっていることは十分意識してください。
 中間処理の目的を大きく分けると、、、
 A・ダメージケア
 B・カール効率のコントロール
 C・質感のコントロール
 D・持ちの良さ
 こんな感じでしょうか。。。
 実際にはすべてがリンクしてくることも確かですが、主に何に観点を置くか?ということを踏まえて中間処理の工夫を考えてみると整理しやすいと思います。
 アプローチ順にお話します。

■中間処理
1・中間水洗
 中間処理で最も重要であるのが「中間水洗」です。ただ単に、1剤を洗い流すことだけです。簡単ですね!アイテムも水道水と時間だけですね!A~Dのすべてはこれで解決できると言っても過言ではないと思います。
 では何故、単なる中間水洗が大切なのか?簡単にお話します。
 1剤処理は前回もお伝えした通り、シスチン結合の切断により髪にパーマが掛かる状態にすることが目的ですね。その作用が終わった時点で1剤は必要ないので出来る限り除去するのが中間水洗です。すべて流しきることは無理だと思いますが、それを行わない場合は還元剤やアルカリ剤など多量に髪に残っています。それらは還元剤とS-S結合が結びついてしまう「混合ジスルフィド」という不要生成物質によるダメージや2剤処理の阻害によるS-S再結合の不足でのダメージ要因になります。

 こう考えてみてください。適正還元で丁度良いカールチェックでした。でも中間水洗をしないことによる、「混合ジスルフィド・2剤処理の阻害」があり、チェックでは良かったカールが仕上がりではイマイチになりました。そうなると仕上がり的に次回はもっと1剤を強くしないと!とか、1剤タイムを長く置かないと!というようになりがちですね。
 こうなってしまうと不要なダメージへの負のスパイラルになるわけです。パーマはダメージによる髪の強度低下=S-S結合の減少によりどんどん掛からなくなります。絶対とは言えませんが、1剤を除去していれば思い通りのカール形成が出来たかもしれないのですね。では、カール形成が不十分であった原因となりそうな不確定要素はなんでしょう???

 それは中間水洗をしなかったことだと考えられますね?
 1剤はその作用が済んだらあとは邪魔以外の何物でもないということです。中間水洗というプロセスに関しての質問やディスカッションで、一番多い考え方があります。「酸リンスを使うので1剤は中和されるので大丈夫なのでは?」ということです。大丈夫だと思えばそれでも良いかもしれませんが、自分の答えは勿論「いいえ!」です。

 まず、酸リンスは「還元剤」を中和することはできません。「アルカリの中和」ということになるのです。ph調整が必要なのはアルカリ領域の1剤の場合になりますが、酸リンスでphが下がることにより還元剤によってはその作用は極端に低下します。よって確かに還元剤は働かなくはなるわけです。しかし、還元剤は髪に残っていますのでそのまま2剤処理により、出来るだけたくさんのS-S結合に戻したいところを還元剤と多く再結合してしまう可能性が高くなります。酸リンスは中間水洗みたいに「洗い流すくらい付けてますけど!!」という意見もあります。
 しかし、酸リンスにより毛髪は膨潤状態から引き締められますので髪はたっぷりの還元剤を抱えたまま引き締まることになりますので流れ出にくくなることが考えられますね。
 要は髪内部との水の交換が出来なくなってしまうことで1剤の残留量がどうしても多くなるということです。
ただでさえ、1剤放置中には混合ジスルフィドが生成されていますので、他のプロセスでの生成要素は無くすべきでしょう。

 また、酸リンスの「酸」によって毛髪には「キレート鎖体」という物質が生成されます。これは還元剤の働きをブロックする性質があるので、その部分に今後パーマが掛かりにくくなる可能性があります。ph調整も酸リンスに頼るよりは中間水洗でアルカリを流すことでphを下げるほうが無難だと思います。
 ちなみに自分は中間水洗では炭酸泉を使用するので「酸度」がない弱酸性の水を使えますのでph調整は水洗で十分出来てしまいます。
 中間水洗の意味合いがおわかりいただけたでしょうか?中間水洗をしないことは不確定要素の「Amazon」なんですね。

 2・PPTやCMCによる保護や強化
 ここがお話する内容で一番厄介です。ダメージ状態や硬毛、軟毛、細毛、太毛、、、、対象と仕上がりのデザインによってアプローチがかなり変わってくるからです。毛髪強化や質感を作る工程になりますが、主にPPT類とCMC類、樹脂類が使われるケースがほとんどでしょう。
 細かくお話すると自分の脳みそも溶けていまいそうになるのでざっくりとお話しますね。まず、パーマは重力に逆らっていることを頭においてください。その上で以下のことからどういう処理剤を選択していくか?考えてみましょう。

 ☆PPTは高分子ほどにカール効率が高まります。低分子ほどにカール効率が低下します。
 ☆PPTは高分子ほどに髪は硬くなり、ハリコシが生まれます。低分子ほどにしなやかな柔らかさが生まれます。
 ☆PPTは種類によって質感やハリコシなどの性質が大きく変わります。
 主には、
  ・ケラチン=ハリコシ、重さ
  ・コラーゲン=しなやかさ、重さ
  ・シルク=ハリコシ、軽さ
  ・羽毛=ハリコシ、軽さ
  ・その他、小麦、大豆など、、、
 ☆PPTは化学修飾により性質が違う。
  ・シリル化PPT=低分子で入り込んだPPTが加熱又は酸による処理でシリコーンの皮膜を作り高分子化して、ボイドに蓋をするように定着する。
  ・カチオン化PPT=プラス帯電しているのでダメージによるマイナス帯電に定着する。
  ・アルキル化PPT=油分を多く抱えさせてあり、ある程度の水分量やphの変動で一気に疎水化して定着する。
 ☆CMC系のものは髪に重さが出ます。脂質や水を多く抱えられるようになるからですね。
 ☆樹脂類はハリコシが抜群にUPします。しかし、素材の重さが出ます。
 もう頭が痛いですよね?笑!!

 すべては目の前で髪を触っている技術者が知識と経験と勘で処理する部分になるのです。
 しかしながら、、、還元処理で最低限のダメージを狙う場合、還元が的確であれば上記のような処理剤はほぼ必要ないと考えています。ここまで書いておいて必要ないなんて。。。(苦笑)
 でも有効に使うことで質感などもコントロールできるので仕上がりの狙いを考えた上で色々工夫してみると良いと思います。

 そんな処理剤のなかで自分が絶対外せないモノが、、、「ヘマチン」です。理由は、ヘマチンは鉄の分子構造を持っているので還元剤の働きを止めてくれます。中間水洗をしたとしてもどうしても内部にはそれが残ると考えられます。それらの働きをしっかり止められるであろうモノがヘマチンだということです。それにプラスしてタンパク質の架橋や酸化促進の効果もあるので毛髪強化やカール効率、2剤での酸化効率のUPも狙えます。

 PPT類は色々書きましたが、現在自分が主流に使っているのが羽毛ケラチンです。ハリコシと軽さということを両立している為、重力に逆らう為の毛髪強化にはもってこいと考えています。

3・2剤前処理と2剤処理
 2剤は現状において、臭素酸Naか過酸化水素ですね。双方は活性phが違いますので使用までのアプローチが全く変わります。
 ・臭素酸Na
酸性活性である為、アルカリ領域の1剤を使用した場合は一般的には「酸リンス」によりphを酸性領域に近づけておくほうが2剤は有効働きます。ただし、中間水洗で触れましたが「キレート鎖体」の問題もあるのでアルカリは中間水洗で抜いて、2剤前には酸リンスは使わないほうが良いとも考えられます。
 臭素酸Naの酸化能力は強いですが作用はゆっくりですので10~15分程度で考えます。当然ですが、中性や酸性の1剤を使用した場合にはそのまま2剤処理でOKです。バッファー剤や酸リンスでの残留アルカリ除去などは「酸」が残りにくい2剤処理後が良いと思います。

 ・過酸化水素
 アルカリ活性である為、アルカリ領域の剤を使用した場合はそのまま塗布します。そして2剤処理後に酸リンスやバッファー剤でph処理をしておきます。気をつけたいことは、過酸化水素は酸化能力が非常に高いのでアルカリ活性状態であれば通常1分~3分程度で十分な作用があります。超短距離ランナーみたいなものです。よって、短時間で多量の塗布や回数が必要ですので意識してください。酸化熱を持ちますのでその間は酸化剤を欲しがっています。何度か再塗布をして熱を帯びなくなるまで塗布しましょう。
 中性や酸性の剤の場合、理論的には臭素酸Naによる2剤処理が推奨されます。過酸化水素使用の場合は7分以上の作用を目安にしましょう。

 ・2剤処理注意点
 2剤処理はS-Sの再結合という観点でも大事な工程になります。しかし、酸化処理は「システイン酸」という不要生成物質を作り出してしまいます。元々のシスチン結合がシステイン酸というものに変化してしまうわけです。よって毛髪強度は低下します。酸化工程では仕方ない生成物質なのですが、しっかり酸化しようと過度な処理になるとこの物質を増やすことになるので気をつけましょう。

■後処理
 後処理は2剤処理の最後とかぶりますが、残留アルカリや残留還元剤の除去と最終的な質感作りです。
 2剤を流し終わったら、ヘマチンによる残留還元剤や過酸化水素の除去。続いてバッファー剤による残留アルカリの除去や毛髪の引き締めを行います。その後、ステップ式トリートメントなどで質感を整えます。最終プロセスにおいて考えなくてはならない事は「軽さ」です。パーマは重力に逆らっているので重さが出てしまう処理はしっとりはしてもこの軽さという点でスタイリングでは不利になるわけです。このことからパーマのトリートメントはハリコシが出る軽いものを選ぶと良いと思います。

 さて、、いかがでしょうか?? 脳がオーバーヒートですね~。そんな面倒な事しなくても~とかそこまでやらなくても大丈夫~~ってホント良く聞くんですよ。
 でもそれを省いたりするのは、プロセスの中に不確定要素を作ることになり、結果が大丈夫ならまだしも失敗した場合の原因を掴みにくくしてしまいます。
 中間処理においてはまずは中間水洗から始めてみることをお勧めします~。
 それでは次回はカラー(アルカリカラー)のケアについてお話しますね。


第4回 平成24年10月20日                                 ページトップ   
 コールドパーマ-1
 コールドパーマは「形成還元」といって還元作用をさせつつ、ロッドによってカールやウエーブなどの形を付けていくパターンです。
 ちなみに講座2の矯正やアイロンパーマ、またデジタルパーマは「前処理還元」といって還元作用中は形を付ける作業は無く、還元が終わってから形を付けていくパターンです。
 今回はこの「形成還元」パターンのパーマにおけるケアをお話したいと思います。
 まず、ケアで考えるべきコトを大まかなプロセスで分けると、、、
 1. 前処理・・・還元作用のコントロール
 2. 中間処理・・・還元作用のストップやカール効率のコントロール。毛髪強化や2剤による酸化促進。
 3.後処理・・パーマ後の残留薬剤の除去や毛髪強化の処理
 このような感じになります。

 それでは順を追ってお話しましょう。
■前処理
 還元はS-S結合を切断し、コルテックスが移動(ずれる)できる状態にすることが目的ですね。
 形成還元ではロッドに巻かれて髪に応力が掛かっている状態で還元されるので還元作用に応じてコルテックスの移動も同時にされています。還元はS-S結合は切れたり、繋がったりを繰り返しながら作用が進むのでテストカールの時点でカールが付いてきています。
 この際、薬剤の作用はロッドに巻かれている部分全体に及びます。
 毛先と中間にダメージ差があっても薬剤は同じパワーで作用してしまうわけです。その場合、当然ながら毛先のダメージ部分では作用が強くなってしまいます。
 結果として「毛先だけ強くパーマが掛かる」「ダメージ部がハイダメージになってパーマが掛からない」「パーマが掛かってもドライするとバサバサになるだけ」・・・と様々に上手くいかないパターンとなることもあります。
 そこで前処理の必要性が出てきます。講座1でお話しした通り、前処理はダメージの均一化を狙います。単純な話、ダメージ部分への薬剤の浸透や作用を阻害させればよいのです。
 パーマの場合の基本的な薬剤選定は長さやデザインにもよりますが、根元から毛先に対して中間から決めていくと良いと思います。その中間の選定に合わせて前処理を考えることが大切です。
 髪は大きく分けてキューティクル領域とコルテックス領域になっています。そしてそれらをくっつけているのがCMCというものです。
 講座2でも説明しましたがダメージはCMCの欠損から始まり、キューティクル、タンパクの欠損とダメージ段階によってその度合いがあります。
 わかりやすくする為にダメージ部分を保護するパターンの前処理で説明しますね。
 前処理では使用した処理剤の質感や効果を仕上がりで残すという概念はありませんが、ダメージの均一化という意味で欠損しているであろう部分に対してそれを補うことをするわけです。
 ただ、それら処理剤もそれなりに高価な上、質感を残すことも考える必要はありませんので余程のダメージ差や狙いがなければ、薬剤の作用を減力、阻害したい部分に適当なトリートメントでもつけておけばそれでもOKということです。
 還元剤を用いる前処理もあります。これは薬剤の知識が少し必要ですが、減力や阻害だけを考えて前処理した場合にそれが行き過ぎて、毛先が掛からないなどもあります。
 ケースバイケースなので一概にコレ!とは言えませんが、例えばプレ還元とアクティブ還元にわけて予めphによる挙動の違いのある還元剤などをプレ還元としてダメージ部分につけてワインドしておき、その後にアクティブ還元の薬剤を塗布することで薬剤同士の干渉によりダメージ部分の薬剤作用を阻害させるわけです。
 しかし、プレ還元によりその薬剤作用でダメージ部分には程よく還元がされており毛先が掛からないなどの現象を防ぐ効果が期待できます。
 どのようにせよ前処理は丁度良く出来ていれば、想定通りのパーマが掛かりますし、やりすぎればパーマが掛からないということもあります。このあたりは経験値から考えていくところでしょう。
 一番やってはいけないパターンは「闇雲に前処理剤を付ける」ということです。

■例1・薬剤処理の履歴がない健康毛なのにダメージ抑制の前処理剤を使う。
 これは良くあるパターンです。自分もやっていたことあります(笑)健康毛なのにPPTやCMCをつけて、傷まないように~~なんてね!
 処理剤つければ薬剤は減力されて傷みが少ないのは当然ですね。
 本来は対象毛に適した薬剤や作用時間でクリアにするのが正解だと思います。そうすれば処理剤を使う必要はないのでその分の経費的、作業的時間を無駄することがありません。
 わざわざ無駄な処理剤を使って、その上で強い薬剤を減力させて、傷みが少ない~!っていうのはナンセンスだと思いませんか?

■例2・毛先のハイダメージ部分と中間のミドルダメージ部分、根元側のノンダメージ部分、すべてに前処理剤を付ける。
 これも良く見るパターンです。全体への薬剤作用が減力されるだけで全く意味のないことになることが今までのお話から解ると思います。この場合は中間のミドルダメージ部分に薬剤選定を合わせて、毛先のハイダメージ部分にだけ前処理をすれば良いのです。

 今回は前処理のお話でしたが基本的な考え方は「1剤還元作用の阻害」ということです。勿論PPTによりシスチン結合を疑似的に増やすことでダメージヘアにパーマを掛けやすくするという前処理もありますが、基本としての意味合いはしっかり頭において1剤での還元処理はしましょうね。
 それでは次回は中間処理のお話をいたします。お楽しみに~。


第3回 平成24年8月29日                                 ページトップ  
縮毛矯正後篇
 縮毛矯正やアイロンパーマなど高熱を利用する施術には、タンパク質を含まない処理剤を使用した「ポリイオンコンプレックス」が有効であることご理解いただけていると思います。
 では、実際にどのような事を考えて施術していけばよいか?をお話します。
 ちょっとごちゃごちゃしてきますので良く整理しながら理解してくださいね!
 髪の等電点は弱酸性、phであらわすと5前後と判断できます。これは物質によって様々で水であれば中性の7程度だったりします。
 この等電点というのはその物質が安定していられる状態で、帯電もプラスマイナス同じ数になっています。
 等電点からアルカリ側に振られるとマイナスの帯電が増えて、酸性側ではプラスが増えます。
 そして、プラスの帯電が増えればマイナス帯電の性質のものを引き寄せやすくなり、逆もまた同じです。
 これらの性質を利用したのが「イオンコンプレックス」という皮膜形成のテクニックや商材です。普通に使われているシャンプーやトリートメントも同様ですね。
各種処理剤やトリートメントは、髪の帯電状態に対して、各種の物質がくっつきやすいようにするため、電子的な性質を持たせているものがあります。
 ■カチオン化・・・物質がプラス帯電させてあることです。カチオン化PPTとかカチオン化キトサンなど、カチオン~~と呼ばれています。
 ■アニオン化・・・物質がマイナス帯電させてあることです。これもアニオン~~と呼ばれてます。
 例えば、トリートメントやリンスなどはプラス帯電のカチオン系のものです。ダメージケアのシャンプーは両面界面活性剤でカチオン系のトリートメント成分が入っていますね。
 髪は水に濡れているときは、、、、
 水のphにより、等電点からはマイナス帯電に変化しています。その為、髪は水膨潤を起こしています。髪の内部のCMCやタンパクは流出しやすい状態ですね。そこでシャンプー剤は水膨潤を最小限にする為に弱酸性で髪を等電点に引き、配合されているカチオン化成分は髪にくっついてダメージから保護しているわけです。
 カチオン化成分が多く入っているシャンプーを使った場合にリンシングでヌメリ感があるのはコアソルベートが出来ているからです。
 トリートメントも同様です。リンシングでマイナス帯電している髪にカチオンの成分が多く入ったトリートメントはくっつきやすいわけですね。

 それではこの原理を矯正の皮膜作りで考えてみましょう!
 薬剤処理が終わり、中間水洗から説明します。
1、中間水洗&シャンプー
 中間水洗は十分に行い、余分な薬剤をできるだけ流します。その後シャンプーしますが、シャンプー剤は健康志向の方には嫌われているラウレス硫酸Naなど「アニオン性界面活性剤」のタイプが有効です。何故だかはわかりますか?
 カチオン系のものでも良いのですが、皮膜処理としての有効性を考えるとアニオン系になります。
 薬剤の多くには少なからずカチオン系のコンディショニング成分が入っています。薬剤は中性のものを使用したとしても髪の等電点から見ればアルカリ側に振られていますので、それらのカチオン系の成分は髪に残りやすくなりますね。
 そのカチオン成分とアニオン系界面活性剤によるコアソルベートを狙っているわけです。そして後に重ねるカチオン系の成分を張り付きやすくしているのです。
 カチオン系のシャンプーも勿論使用します。その場合には、お流し後にアニオン系の処理剤をつけています。
 もう1つの目線から考えてみましょう。
 薬剤のお流しとシャンプーによるゼロベース(後の処理剤のために髪に何ものっていない状態にする)という考え方です。この場合にはカチオン化成分の少ないまたは配合されていないシャンプーと炭酸泉による処理です。
 自分は現在この方法が主流です。まずは炭酸泉ですが、これはph5あたりになる炭酸濃度があることが条件になります。それにより髪の等電点と同等のphのシャワーでお流しが出来るということです。
 薬剤によるアルカリ膨潤からある程度髪を引き締めることと同時に水よりも比重の重い炭酸泉による毛髪内部の水の交換が効果的な為、毛髪内部の残留薬剤や中間処理にとって余計なコンディショニング成分も通常のシャワーに比べてかなりキレイに洗い流せると考えられます。
髪を引き締めると言っても炭酸泉には酸度がほとんどは無いので後の形成工程の邪魔をするようなアルカリ中和剤などの収斂効果まではありません。
 このようにゼロベースを作った上にコンプレックスをさせてコアセルベートを作っていくわけです。

2、中間処理・ポリイオンコンプレックス&コアソルベート
 ① シャンプーが終わったら、カチオン系の処理剤を塗布します。画像ではカチオン化セルロースをスプレイヤーで塗布しています。シャンプーの流し後はアニオン系の界面活性剤が上にきていることと、薬剤のアルカリなどでphは上がっているのでマイナス帯電ですのでそこにはカチオン系のものが反応して張り付きやすくなっています。
  
 ② コーミングで良くなじませたら今度はその上にアニオン系の処理剤を塗布します。画像ではアニオン化キトサンを泡ポンプで塗布しています。塗布後はコンプレックスの反応時間を少し置いて、ブローやアイロンに入ります。
  
 薬剤のカチオン+界面活性剤のアニオン+カチオンの処理剤+アニオンの処理剤というようにコンプレックスを起こしてコアソルベートを作り、それが髪にしっかり張りつく皮膜になるわけです。
 コンプレックスを起こしてコアソルベートを作る上で基本的に考えることは
 アニオン→カチオン→アニオン→カチオンと必ず極性を考えて処理剤を重ねることなのですね。
 理論は小難しいですが、実際には意外に単純です。でも繊細な一面もあり、最適なものにするには各処理剤の性質や濃度や塗布量なども関係してきますのでそのあたりは経験で図っていくところだと思います。
 メーカーのシリーズでのシステムや一般的な理論ではダメージしているからカチオンが張り付きやすい!と、カチオン性の処理剤を重ねるパターンが多いのです。すべてに必要というわけではありませんが、コンプレックスさせるほうがより効果的なケアができると思います。
 ポリイオンコンプレックスの理論はパーマでもカラーでもケアという観点では様々に応用できますので是非色々と考えてみてください。
 また、今後のケアの講座でも出てくることなので理解しておいてくださいね!
 それでは次回はパーマについてのケアをお話したいと思います。

 
第2回 平成24年8月3日                                  ページトップ
 縮毛矯正前篇
 (160度以上の高熱を利用するという観点からアイロンパーマもほぼ共通します)
  縮毛矯正とアイロンパーマとの共通点は高熱アイロンによる施術ということです。薬剤処理における還元作用は真逆の発想をしなければなりませんが中間処理は共通です。
 高熱を使う施術に関しては、その熱によるタンパク変性に対するケアが重要となります。
 ご存じのとおり、髪はアミノ酸の集合体によるタンパク質で出来あがっていますね。
 タンパク質は熱やアルカリに対して弱いです。わかりやすい例としては「卵」が使われます。
 生卵をフライパンで熱すると固まって簡単に焦げてしまいます。アルカリに浸すと溶けてしまいます。この現象を髪にたとえて説明されていることが多いです。
 縮毛矯正、アイロンパーマ、それよりは低温ではありますがデジタルパーマ・・これらは還元剤によるS-S結合の切断によるコルテックスの移動と形成後の酸化によるS-Sの再結合にプラスして、熱によるタンパク熱変性を利用し、その形を得ているわけです。
 ここで問題となるのがその変性度合です。過度に変性させればアイロンパーマならガリガリとした質感になり髪の美しさが無くなります。
もし、濡れているときにカールが付いてなくて、乾かすとグッとカールが付いてくるような髪になっている場合は、過度なタンパク変性となっています。髪は水分が多いほど水素結合が切れていてS-S結合の状態がよく出てきますね。それが見えないのに乾かすと出てくるというのはS-S結合によるカールがあまり付いていないということです。
 適度な場合は、濡れていてもカールはしっかり付いており、乾かしてもダレないカールになるのです。矯正では毛先はぴんぴんと広がり、しなやかさは失われます。場合によってはチリチリとしたダメージが出ます。
 ケアの説明は適正な還元が行われた上で適正なタンパク変性を狙って形を出す為の方法となります。

 そのケアのポイントは・・・・・
☆「耐熱効果を生み出す皮膜作り」
 この一つではないかと思います。還元によりタンパク質は分解されて弱い状態ですね。そこに高熱アイロンによる形成です。耐熱性を考えずに闇雲に処理をするとむしろ状態を悪くしてしまう可能性もあるのです。
 皮膜の形成は次のような反応を利用しています。この反応は縮毛矯正以外でも様々なケアで使われていますので頭に置いておいてくださいね。
 ① イオンコンプレックス
 イオン(プラスマイナス)・コンプレックス(複合体)ということです。アニオン性(-)の物質とカチオン性(+)の物質がくっつき合う反応を起こし、コアセルベートという物質を作り出します。それが皮膜となります。
 ② コアセルべート
 アニオン性とカチオン性の物質を混ぜ合わせるとゼリー状になったり、粘性のあるかたまりが出来たりします。その状態をコアセルベートと呼びます。ケア性の高いシャンプーやトリートメントでなめらかな洗い上がりになるものはこのコアセルベートの原理が使われています。
 (A)高分子のカチオン化セルロースです。
 
  ↓
 (B)高分子のアニオン性キトサンを入れるとイオンコンプレックスを起こします。
 
  ↓
 (C)ゼリー状のかたまりが出来ました。これがコアソルベートです。
 

 コンプレックス処理は様々な方法や狙いがありますが、先ほど書いたように高熱処理を伴う施術の前には高熱から髪を守るべく「耐熱性」のあるコンプレックスが必要なわけです。
 具体的には「ポリイオンコンプレックス」というものが現在は最適とされています。
 イオンコンプレックスは低分子+高分子でコアソルベートを作りますが、ポリ=ポリマー=沢山の分子を持つ構造=高分子ということで、高分子同士のコンプレックスでコアソルベートを作りだすことを「ポリイオンコンプレックス」と呼んでいます。
 しかし、単に高分子同士ではハリコシが強すぎて、髪はパリパリ、バサバサした質感になりしなやかさ失われるのでそれを回避し、耐熱性という条件をクリアできるアイテムを選ぶ必要があります。
 ① セルロース・・・高分子で皮膜性の高い原料です。「カチオン化セルロース」や「アニオン化セルロース」を使います。保水性が非常に高い物質なので熱に弱い印象があるかも知れませんが、アイロン前に水分さえしっかり抜けば、200度近い耐熱性があります。※私はカチオン化セルロースを使用しています。
 ② キトサン・・・高分子で皮膜性の高い原料です。
「カチオン化キトサン」(ヒドロキシプロピルキトサン)や「アニオン化キトサン」(カルボキシメチルキトサン)を使います。耐熱温度は150度程度です。
キトサンの分子構造にはアミノ酸が含まれていますので水をしっかり抜いてもセルロースよりは熱に弱いと言えます。それでも耐熱性のある皮膜が形成出来るので使われている傾向が高いです。※私はアニオン化キトサンを使用しています。
 ③ ミルスタイルX-HP・・・強アニオン性で超耐熱性のある樹脂です。
耐熱温度は220度程度あるので熱の保護には最適です。弾力のある皮膜が作れるのでカールアイロンなど高熱を使用する為のセット剤に使われることが多い原料です。

 これら単品では水に溶けて簡単に流れ落ちてしまいますが、「ポリイオンコンプレックス」として反応させることで毛髪表面に張り付きます。それは熱処理に対する「耐熱の皮膜」になるのでアイロンパーマや縮毛矯正など高熱を利用した毛髪の形成時に毛髪を熱から最大限に保護してくれるわけです。
 さらにはコンプレックスされた皮膜は、コンプレックスさせていない処理と比べて髪に残るので施術後の艶感や質感もしばらくは維持されます。
 これまでのお話を少しまとめると、耐熱という観点から考えて「熱に弱い物質」は使わないほうが良いだろうという
事は理解できたと思います。
 そして、毛髪強化に使われるケラチンPPTなど、アミノ酸の構造がメインの原料は高熱処理が入る施術には不向きな事も理解できると思います。
 簡単に説明すると熱に弱いタンパク質やアミノ酸をその施術に使用すると、それら物質は熱で焼け焦げて髪の表面に残る為、質感が悪くなる可能性があり、時に髪自体にチリつきを起こすことになるのです。
 次にCMC(セルメンブレンコンプレックス)細胞膜複合体が過度に流出していると判断した場合は疑似的なCMCが必要になる場合があります。
 ざっくりですが、CMCは毛髪内部ではコルテックス間、キューティクルでは3層構造の一番下の部分に多く存在します。それらは脂質が主で硬いタンパクのコルテックスやキューティクス上層を張り付ける接着剤的な役割をもっており、髪にしなやかさを与えています。また、ラメラ液晶構造(親水基、親油基がキレイに並んだ状態)になっており 、薬剤や水分が浸透する時の通り道にもなっています。
 形成という点ではコルテックス間のCMCが重要となります。CMCが過度に流出している場合は還元されてもコルテックスの移動が促されにくい状態であったり、熱でコルテックス同士が癒着し、髪のしなやかさが無くなる場合もあります。
 ストレート矯正にせよカール形成のアイロンパーマにせよこのCMCが欠損し過ぎている場合は、目的の形成を阻害してしまうということです。
 薬剤の通り道でもあるCMCは薬剤処理によりその機能は壊れていきます。特にメデュラのあたりまで薬剤が浸透する必要があるアルカリカラー(グレイ、ファッション、ブリーチ共通)とウエーブパーマよりも還元深度が深い縮毛矯正はこのCMCの欠損が激しくなる傾向があるので意識する必要があると思います。矯正毛や過度なブリーチ毛にパーマが掛かりにくいのもこれが一つの要因でもあります。
 文章で書くとなんだか複雑で難しく感じてしまいますね。。。
 理屈さえ理解できれば実践ではそれほど難しい事ではありません。
 さて、ちょっと一休みして頭を整理しておいてくださいね。
 次回は今回の続きです。じゃあ具体的にどうやっているの?ということをお話します。


第1回 平成24年7月11日                              
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 薬剤処理メニューにおけるサロンケア
 今回、「ヘアケア」という観点で特別講座を行います。自分もメーカーの研究者ではないので深く、詳しいところまでは知りませんが、サロンで髪をみてどうすべきか?という判断が出来る様に勉強しています。それらの実践を通じて感じていることや結果が出ていることをお伝えできれば良いなと思っております。サロンワークにおいて常に自分に言い聞かせている事があります。「今日の正解は明日の間違い!」
 それでは数回にわたってお付き合いのほどよろしくお願いします!!

 サロンケアの考え方
 パーマ、カラー(アルカリカラー)、縮毛矯正はヘアサロンにおいて薬剤処理を伴うメニューの代表格としてお客様に提供されていると思います。
 これらメニューを成立させるためには、薬剤により毛髪をダメージさせることが必要です。
 アイロンなど カラー剤
 近年の商材やシステムには・・・・
 「傷まないパーマ!」とか「ダメージレス~~~」いうフレーズを目にしませんか?
 断言しちゃいますが、「傷まない○○○」というものは現在の化学において不可能です。
 マクロ的な観点で言えば、髪の毛は薬剤処理をしないにしても生えてきたその日からダメージは始まります。
 日々のシャンプー、ドライヤー、紫外線。。。。あげればきりがないほどにダメージ要因というものが存在し、日々傷む方向に進むのです。
 また、サロンケア、ホームケアでダメージが治るということもありません。そのダメージ毛の状態をケアにより、疑似的に健康毛の方向へ引いているだけです。治った感じになるだけで毛髪のダメージは進んでいます。

 では我々はサロンにおけるヘアケアをどのような観点で考えれば良いのでしょうか?
 私の個人的な考えは下記の2つです。
① 求める結果に対して薬剤の作用を必要最小限にすることを心がけ、ダメージのリスク管理を徹底する。
 この意味は、薬剤の勉強やテストにより自身が使用する薬剤の挙動や結果を良く認識し、顧客一人一人の毛髪状態に合わせて使う技術を身につける。そして、その履歴を考えた上でカラーやパーマなどのタイミングをサロン側でしっかり提案しましょう。ということです。
 パーマ剤1
② 必要な処理剤を用いて薬剤処理と引き換えになったダメージというマイナスを最大限保護し、可能な限りの埋め合わせをする。
 この意味は、先にも書いた通り薬剤処理においては毛髪のダメージは100%進行します。①による最低限のダメージにプラスして必要な毛髪の保護をしましょう。ということです。サロンケア、ホームケアを含めて考えるところになります。
 処理剤1

 ヘアケアとはこの2つを考えた上で、仕上がりの結果を出して、さらにダメージ進行スピードを抑えることを目的とします。
 そして今日の仕上がりは次回の為になっていることが大事です。髪はエンドレスに伸びてくるわけで、私たちが仕上げているそれは常に通過点の一つに過ぎないのです。
 このような観点は髪を扱う職業人として常に頭に置いておく必要があると思います。

 今回の講座は②の部分に着目してお話しいたしますね。
 大きくは3つのプロセスでのアプローチになります。ご存じだと思いますが、前処理・中間処理・後処理というものがそうです。
 これらは効果的なアプローチがあってこそ意味がありますが、近年のメーカーシステムの図式は・・・無駄にやりすぎ=経費増大、手間増大=料金UP=顧客のコスパ増大
 と、、、ちょっと????となる事も感じています。得をするのはメーカーだけ???(笑)まずはそのあたりの整理からいたしましょう。
 ① 前処理・・・薬剤処理をしやすくするため、ダメージの均一化を目的とします。例えば アルカリカラーだとします。前回3カ月前だとすれば新生毛は約3cmその先は既染毛ですね。その既染毛部はダメージがあるので前処理により新生毛のレベルに少しでも近づけることで薬剤の作用を毛先まで均一化することが狙えるということです。
 パーマでも同様に前回のパーマが残っている部分に前処理をすることでその部分への薬剤の作用を減力させているわけです。逆に新生部をダメージレベル近づけるパターンもあります。薬剤作用の可能な限りの均一化!これが前処理の基本です。
 基本からズレますが、ダメージ部分にパーマが掛かりやすく!とかカラーが定着しやすく!というのも前処理として有効な場合があります。
 
 ② 中間処理・・・パーマや矯正など還元作用を伴う薬剤処理では目的の還元後。カラーであれば乳化時のケアになります。この時点で「何」をケアすれば目的を達成できるか?を考える必要があり、その「何?」は目的に応じて多大なアプローチがあります。薬剤処理メニューのケアのなかで方向性が多様化するのが中間処理ですね。
ウエーブ効率や質感のコントロール、矯正なら熱対策、カラーなら補修や退色防止。。。。技術者としては一番悩むところです。後の講座で薬剤処理別に考える方向性はお伝えしていきます。

 ③ 後処理・・・最終的な質感調整、残留薬剤の除去などがこれになります。ステップ式トリートメントなども含まれます。

 さてサロンケアにおいてどういう観点でそれを考えれば良いか?なんとなくでも理解は出来ましたでしょうか?
 しつこいようですが、薬剤処理を目的に対して最小限のダメージに抑えることが一番のケアになることを前提として、プラスアルファのケアがあることを頭から離さないでくださいね。前処理したから大丈夫!中間処理でトリートメントするから大丈夫!後処理でトリートメントするから治る!
 ということは100%あり得ません。
 ということで、、、次回は高熱アイロンを使用するメニューに対するケアについて縮毛矯正を例にお話ししたいと思います。
    

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