特別講座006
サ・ロ・カ・テ

現代サロンヘアを通して読み取る
      “カッティング原則集”
          狐塚 均
  naturel_12@yahoo.co.jp

基礎刈実際編(P26) 
 クリッパーワーク
 平成27年6月8日 第20回
(最終回)
 原則集26頁にクリッパーを入れる手順について、次の文章が記載されています。
【以下原文】
 頭部の周囲にクリッパーを入れてからブロースカットを行うには
1)細顔
 ① 頭部の周囲には、9mm(通称5分)のクリッパーを入れて基礎刈を行い、基礎刈の最終段階に後頭下部に2mm(通称5厘)のクリッパーを入れて暈しを造る。
 ② 頭部の周囲に9mm(通称5分)のクリッパーを入れ、後頭下部にも2mm(通称5厘)のクリッパーを入れておき、基礎刈が終ってから暈しを造る。
2)丸顔
 頭部の周囲に7mm(通称3分)のクリッパーを入れ、次いで5mm(通称2分)3mm(通称1分)と順次入れ、基礎刈の最終段階で後頭下部に2mm(通称5厘)のクリッパーを入れて 暈しを造る。 
 尚、顔・丸顔とも耳上部に2mm(通称5厘)のクリッパーを入れては不可ない。
3)角顔
 頭部の周囲に5mm(通称2分)のクリッパーを入れ、次いで3mm(通称1分)2mm(通称5厘)と順次入れ、暈しを造ってから基礎刈を行うと良い。
【以上】

 ブロースやハーフロングのように上まで刈り上げるようなスタイルの場合、クリッパーを入れる手順により上部のカットラインに影響が出やすいため、そのことを計算の上で手順を決めると良いということです。
 下の写真は、モヒカン風のスタイルのカット手順の一例です。
 顔の形が細顔ということではなく、創るラインが”上すぼみ”のため、 上記の 1)細顔①の順序でカットをしてみました。
 写真aは、カット前です。
 a
 写真bは、先ず8ミリのクリッパーを上段部まで入れました。
 b
 写真cは、基礎刈が終わった状態です。耳の周りも8ミリの厚さがあるため自然と上すぼみになりやすい条件となっています。
 c
 写真dは、後頭下部に2ミリのクリッパーを入れた状態です。
 d
 写真eでは、ぼかしが終わった段階です。

 ぼかし終えた状態を正面から見ると、写真fのように耳の周りも薄くなっています。耳の周りのこの薄くなった状態を、基礎刈より先にカットすると、上が広がりやすくなり、原則集での説明の中の角顔の場合の手順になるわけです。
 f
 写真gは、梳いて仕上げた状態です。
 g
 基本的には、顔の形によりクリッパーワークの手順を変えるということですが、このように顔の形とは別に考えて、創るラインで手順を変えていくことも応用の一つです。
 但し、どのようなスタイルでも顔の形を無視したスタイリングは、ありません。モヒカンスタイルでも、その人の顔容に合わせたラインにする必要があることは当然です。

 本講座「カ・テ・サ・ロ」は、第100回全国研修会記念誌『カッティング原則集』から、サロンヘアに於けるヒントになる部分をまとめてきました。この連載は今回を持って最終回とさせて頂きます。この内容が、会員の皆様のサロンでのカッティングに少しでもお役に立てれば幸いです。。
 基本カットの理論をサロンヘアに結びつけて学びを高めていくことは、考えてみれば関連していく項目は無限にあります。本講座は原則集の内容に限ってのものでしたが、この後早い時期に原則集を離れ、更に範囲を広げて『ネオ・応用スタンダードカット』のようなタイトルで、新講座が開始出来ればと思っています。
 今回までの御閲覧、ありがとうございました。


理論編P13~ 運行角度
 平成27年5月26日 第19回

 運行角度については、原則集13頁に「櫛の運行原理」として次の文章が掲載されています。

 『髪型に表われる線のことを私達は通常“固い線”、あるいは“柔い線”等と呼んでいるが、これは、便宜上そう呼んでいるのであって直線または直線に近い線のことを“固い線、”丸味の大きい線を“柔い線”丸い線のことを“円線”と呼んでいるのである。
  1)垂直運行は、双曲線が生れる。
   この場合、技術者の身体を固定しておいて手だけが垂直に運行されるのである。
  2)30度運行は 直線が生れる。
  3)45度に運行すれば 柔い線が生れる。
   では 何故柔い線が生まれるのかと云うと
  4)45度以上の角度は、縦の線に近く、45度以下の角度は横の線に近い。
  5)45度の角度は、90度の縦の線と、0度の横の線との中間にあり、距離的に最も平均している。
    つまり、45度以上に角度を多くして櫛を立てた場合には、上の方の頭髪を短くし、また45度以下の角度に 櫛を寝かせた場合には、上の方の頭髪が刈りきれずに残ってしまう。従って
  6)45度運行は、剪髪角度・方向角度とも同じで、上下・左右何れの頭髪にも良くなじむようにカットが出来るので、柔い線が生れるのである。
  7)細顔の髪型を造るには、45度以上の角度が良く、角顔の髪型を造るには、櫛の角度を45度以下にすると良い。
 前述の理論からして櫛の角度を大きくしてカットをした場合、上の方の頭髪が短か目に刈られて細顔の人に似合う髪型が得られるし、櫛の角度を少なくしてカットをすると、上の方の頭髪が残り自然の内に角顔の人に似合った髪型が得られるのである。』

 以上が掲載文ですが、ここに書かれている運行の角度は、上から数える角度です。即ち垂直運行とは、0°のことです。30°とは、下から数えれば60°の角度です。
 縦とか横の線は、剪髪角度と同じですから、運行角度が、寝れば(数字は大きくなる)剪髪角度は起きます。つまり縦の線になるわけです。

 さて、次の写真のようなスタイル、最近多いのではないでしょうか。分髪した小山側は、全て取ってしまっています。分髪位置も斜めで、前は4:6、後ろは2:8の位置です。尚且つ分髪の前方は、剃り込を入れています。 写真bを見て頂くと解ると思いますが、側頭部の刈り上げが左側は、上をすぼませる様に丸く刈り込んでいます。右側は、上部に長さを残すようにまっすぐ上に刈り上げています。
 a

 b
 c
 d
 ここで、今回のテーマなのですが、左右側頭部の刈り上げに対しての運行角度です。
 写真cの左側頭部は、赤線のように45°に切り進みました。このため上部の方に向けて丸く切れています。
しかし、右側では、上部の長さを残すために30°にカットしました。(ここでの30°とは下から数えれば60°で外郭線と平行です。)
 上部をもう少し残すような場合は、運行角度を垂直に近い角度にすると更に上部は残し易くなります。



技法編P60~ 指間刈
 平成27年5月23日 第18回

 原則集では、指間刈についての説明が60頁から詳しく掲載されています。
 図a

 図b

 図a・bは、ミディアムカットでの指間刈の断面図です。ミディアムカットの天頂部は、丸く切るため45°方向にカットをします。指間刈をすることで、図aのように「運行方向の円」と「剪髪角度の繋がりの円」の二つの円で構成されています。そのためどこから見ても丸さがあります。
 「剪髪角度の繋がりの円」は、技術者の体の角度を調整して作ります。「運行方向の円」については、図cのように右肘を軸として描く円で作ります。肘を軸とした円と言っても、その運行は真上から見ればもちろん直線です。丁度分髪をするような要領で、球に対し円を描くと直線が生まれるのと同じです。
 図c

 原則集にも書かれていますが、基本の天頂部(後頭部が標準型で左7:3分髪)の指間刈には、応用の方法が具体的に決められています。その内容を理解すれば、サロンヘアでの天頂部のカットは殆ど出来てしまいます。項目のみをまとめてみると次のようになります。
 ① 基本の7:3分髪以外の位置の分髪(2:8、4:6等)の場合
 ② 基本の逆側である右分髪の場合
 ③ 基本の標準型ではなく、突出型と欠損型の場合
 ④ 天頂部の毛量が薄い場合
 ⑤ 分髪スタイルではなく、バックスタイルの場合
 基本の天頂部の切り方と、①~⑤までのそれぞれの違いを知ることで、様々な応用のヒントに結びつくと思います。その中で私が興味深いと思うことが二つあります。一つは、③の欠損型の切り方ですが、オーバーダイレクションの考え方が使われています。それともう一つは、④の薄い毛髪に対しては、ディスコネを応用しています。
 と言ってもディスコネも、オーバーダイレクションも、ずっと後で出来たものですから、それこそ基本の応用と言えるものです。
 深く入れば入るほど、基本とは魅力を増していくものだとつくづく思います。



技法編P30~ 掬い刈 
 平成27年5月14日 第17回

 原則集30頁から掬い刈についての記述があります。そこで詳しく述べているように、掬い刈は、図aの下の図のように、切る毛髪の最下部を直上にした直角三角形で切ることが原則です。図a中図のように中間が直上になってしまっては、カットラインは揃いません。また図a上図のようにめくってしまっては、上部が短くなってしまいます。
 図a

 これを理解し正しい掬い刈が出来るようになることが大切です。しかし、基本を理解していれば、応用することも可能です。例えば 、ネープをレイヤー上にするような場合には、図a上図で良いわけです。応用し、使い分ければ、カット状態のレパートリーも広がります。
 それとは別のことですが掬い刈は、「上下の長さの差が大きいほど掬い刈の回数は少なく、差が小さいほど掬い刈の回数は多くなります」これは、理容学校の教科書にも載っています。
 このことは二つの図を描いて見比べてみれば、当然のことですが、この文章だけ頭の中で考えていると、「ほんとかな?」と思いませんか。私はある時、そう思ってしまいました。
 その話はいったん置いて於いて、原則集33頁に「ピタゴラスの三角形の和の原理」という言葉が載っています。但しその説明についてはあまり詳しく載っていません。このことは私も以前から何のことだろうと思ってはいたのですが、これまで深く考えたこともありませんでした。
 そこで前述した掬い刈の回数の話に戻りますが、「上部の毛が長くなると掬い刈の回数は減る。」ということです。しかしいったん疑問に思った以上は、確かめたくなるものです。そこで図bを使い検証をしてみました。とはいっても私はとても苦手な分野ですので、店のスタッフの知恵を借りながら掬い刈の回数による上部の長さの違いについて次のようにまとめてみました。
 図b

 掬い刈の回数による上部の長さの違い
 頭皮面AEを、二回の掬い刈で切る場合(一櫛目①、二櫛目②)と、一回の掬い刈で切る場合(③)の、上部の長さ(BEとDE)を比較する。
図ABC(①)と図CDE(②)は、直角二等辺三角形である。
図ABE(③)は、①と底辺を共にする直角三角形である。
前提  AB=AC=2  BC=CD=CE
三平方の定理を用いて直角三角形の斜辺の長さを求めると次のようになる。
【三角形
(AB)²+(AC)²=(BC) ²    2² +2²=8  BC²=8 斜辺=√8 (2.828)
【三角形
(CD)²+(CE)²=(DE) ²   √8 ² + √8²=16 DE²=16 斜辺=√16
二回で掬い刈をした場合の上部の毛髪DEは、√16すなわち4である
【三角形
(AB) ² +(AE) ²=(BE)²  2²+(2+√8 )²  =27.309584
 BE²=27.309584
 斜辺=√27.309584
一回で掬い刈をした場合の上部の毛髪BEは、√27.309584すなわち5.226である

このように辺BEは、辺DEより長い。よって、一櫛の幅が長い方が上部が長くなる。

この連続で刈り進む事で更に長さの差が開く。


 以上になりますが、三平方の定理とは、原則集33頁に載っている“ピタゴラスの定理”です。

 私は、この講座の「はじめに」で、原則集に接していると「悠久のロマン」を感じると述べました。読めば、昔の名人に出会えるような気がするとも述べました。その所以が、理解に苦労しながらもたどり着いたこの“ピタゴラスの定理”だったのです。

 しかし、このことは図解してみると、一目瞭然ではあるのですが・・・。
 それが、図cと図dです。
 図c

 図d

 このように、上下の長さの差が大きい図cの方が掬い刈の回数は少なくなっています。




基礎刈実際編19~ カット順序の左右について
 平成27年5月13日 第16回

 カットの順序を知ることは、カットの組立てを理解するための近道です。カットの順序を上下・前後に分けて述べてきましたが、今回は左右です。
 基本のカットでは、原型の左右に於いて、基礎刈は、出ている側から、仕上刈ではその逆からという原則があります。頭部の原型は左右の張りが同じではありません。これは毛渦の巻き方に由来します。図aは、右巻きの毛渦の場合の頭部の凹凸図です。日本人の7~8割は、毛渦が右巻きと言われています。
 a

 そのため基本のカットシステムは、右巻き毛渦の原型に合わせてまとめられています。ミディアムカットの基礎刈では、後頭下部・クリッパーのぼかし・後頭部は右側から、側頭部は左側からカットをします。
 では何故基礎刈では、原型の出ている方からカットをするのかというと、例えば原型の窪んでいる方から先にカットをすると、そこを取り過ぎた時、逆側の原型の出ている方は、合わせられないような場合が出てくるからです。だから先に原型の出ている方で長さを決め、次に窪んでいる側を合わす訳です。
 仕上刈は、逆に窪んでいる側からカットをします。これは、仕上刈を行う時点では、前述の問題は既に解決済みな訳です。すると次に優先しなければいけない点は、窪んでいる側を問題点として捉え、その問題点を先にカットするということです。
 この理由を考えると、基礎刈の後頭部は全て右から、側頭部は左からと考えるのではなく、原型観測をして原型の出ている側の確認をしてからカットをすることが正しい順序になります。
 更に飛躍して考えれば、この理由を理解したら、大にも小にも基本の組立てで、左右の問題はそのことだということを理解することです。ということは、逆に考えれば、それだけの理由ということです。つまり、大切な問題ではありますが、この原型の凹凸の問題よりも優先するような要件があれば、当然そこを先に切ることが大切であるということです。
 しかし、ここでも重要なことは、基本があるから応用があるという大原則です。



基礎刈実際編19~ カット順序の前後について
 平成27年5月12日 第15回

 前回の第14回では、カット順序の上下について述べました。今回は前後についてです。
 ミディアムのカットで、下から切るということは、自然に後ろから切ることになりますが、後ろの下の長さを決めて、前方に切り進めていくことが、前回の上下の問題と同じように、積み上げていくカットになります。また、カットはどの部分も必ず、その前に切ったガイドに合わせて切ることが基本です。
 ミディアムカットも後ろから前に、ガイドに合わせて切るのですが、側頭部の運行は、少し状況が違います。側頭部第1運行から第4運行は、図aの通りです。
 a

 第1運行は、後頭部からのガイドに合わせますが、第2運行の耳前部には、ガイドはありません。第3運行は、第2運行がガイドで、第4運行は、第4と第1運行がガイドです。
 「第2運行は、なぜガイドが無い状態でカットをするのか。」
 これは、前方からの見た目のスタイルを大切にしているからです。ミディアムの場合では、後ろから合わせて行って耳前部を切ると、ややもすると頬骨の上の窪みのところをえぐってしまう可能性もあります。そうなってしまっては、顔と髪との繋がりが悪くなってしまいます。
 前から見た形というのは、どのヘアスタイルであっても重要です。それはお客様が大切に思うということだけではなく、完成したヘアスタイルを創るために、技術者自身でも重要な要素です。
 そのことを考えると、サロンのスタイルで、後ろから切るか、前から切るかの判断をするヒントになるのではないでしょうか。
 私自身も、サロンでカットをする際に、後頭部よりも側頭部。側頭部の中でも耳前部からカットを行うことがよくあります。それは基本に逆らっているというよりも、基本を応用した結果と考えています。
 基本を知ること。基本が出来ること。基本の理由を知ること。そして応用の仕方を考えること。この順序が重要なことだと思います。



基礎刈実際編 (19~) カット順序の上下について
 平成27年4月21日 第14回

 原則集では、カット全体の運行についての記載はありません。基礎刈実際編には、19頁からロング・ミディアムのカットの実際についての重要項目が記されています。また60頁からの指間刈りの個処には、「天頂指間刈りは、側頭上部における掬い刈最上段部の頭髪の長さに合わせてカットする」という記載があります。
 スタンダードカットは、下から積み上げて行くようなカットを基本としています。ミディアムでも先ず、最下部の長さを決めて、そこから連続刈・掬い刈・指間刈と、上部に向かってカットをして行きます。
 サロンでの様々なカットも基礎部分となる下部をカットし、そこに合わせて上部に刈り進むことを基本と考えるといいと思います。私もカット順序の上下については、そのことを意識して行っています。しかし上から、即ち天頂部からカットすることも結構あります。それは、下から積み上げていくことよりも、上の形や長さを優先するようなスタイルの場合です。


 図aは、スクエアラウンドのカットフォルムです。このように天頂部や側頭部の形や長さが、下部よりも優先するような場合は、上から切っていった方が、形は創り易いと思います。つまり優先するものの違いで当然カット順序は、違ってくるということです。
 但し、大切なことは、正しい基準を持つことである。基本の順序と意味を理解することで、様々な応用が出来ます。逆に言えば、”基本を知らずして、応用はない”、とも言えます。だからこそカットは全て上から、または下から・・・、というのではなく、考えた上での順序を組み立てることが大切です。



理論編24 (P9) 接合部とクリッパーライン 平成27年4月15日 第13回
 原則集9頁に接合部についての記述があります。
 ロングの接合部は、側頭部に於いて、耳上1.5cm以下、後頭部に於いては、項窩でそれをなだらかにつないだものです。ハーフロングの接合部は、上段上部内に収まっているものを言います。ミディアムの接合部は、ロングとハーフロングの間にあるもの全てです。その中で中庸のミディアムが側頭部では、耳上3cm、後頭部では下段部中程に収まっているものを言います。
 a

 図aの赤い線は、上からハーフロング、中庸のミディアム、ロングの接合部を現したものです。図では、後頭下部にも2本赤線があります。側頭部を刈り上げないで、後頭下部だけ刈り上げれば、このような接合部の線になります。
 図の青い線は、基本の接合部以外の位置を描いてみました。即ち中庸以外の上下にあるミディアムの接合部。そしてロング以下の接合部です。このように接合部は、どの位置にもあります。しかしどの接合部も共通していることは、前後の位置のバランスが整っていることです。
 本講座第1回でも述べましたが、基本のスタイルは、裏返しになってはいけないと言うことです。もちろん応用したデザインになれば、裏返しもありますが、今回はそれは、入れないで基本だけを考えてみます。
 話は、クリッパーワークに移ります。基本のバランスで接合部があるスタイルの場合、クリッパーを入れるラインと接合部のラインは、前後のバランスが、ほぼ同じです。ですからクリッパーは、図の赤線や青線のバランスで入れると、基本のバランスが作れます。
 但しクリッパーは、それ以外に毛髪の密集度や、頭部の原型などで微妙に位置の調節をします。 このように考えると、サロンのスタイルでクリッパーを入れる場合のヒントになると思います。
 もっとも最近では、接合部が裏返しのバランスが多いので、クリッパーもそれに合わすことが多いとは思いますが・・・。



理論編26 (P10) 分髪位置とシルエット 平成27年4月12日 第12回
 原則集10頁に分髪の目的と方法についての記載があります。分髪の位置の変化で、顔の形やゆがみに対応することが出来ます。
 a

 設計学では、図aのように細顔の分髪は2:8(外眥)、丸顔は7:3(瞳の中心)、角顔は4:6(内眥)の位置になっています。分髪の位置で顔の形に合わせた髪型のシルエットを自然に作ることが出来ます。
 但し、設計学が誕生したころは、まだドライヤーで髪を形づけていた時代ではないと聞きます。今の時代で考えれば、分髪の位置も大切ですが、ドライヤーやスタイリング剤で自在にボリュームを出したり、抑えたりすることが可能ですので、形をつけるものは分髪の位置だけではないと思います。
 むしろ分髪の位置は、デザインとしてのイメージを強調するものとも言えます。今4:6で分けてあれば、なんとなくおしゃれでクラッシックなイメージが、あります。2:8は、一般的な横分けというイメージです。2:8であっても、この横分けのスタイルを社会では、通称7:3などということが多いように思います。
 それはともかく2:8を一つのデザインとして捉えた時に、細・丸・角、全ての顔に2:8をあてはめることが出来ます。その場合、分髪位置とは別に、顔の形に合わせたシルエットにすることが大切です。
 b

 図bは、細・丸・角の三様の顔の形に、全て2:8の分髪で形をつけたものです。頭頂部の高さの位置と側頭部の張りの位置は、顔の形を考慮しての設計です。
 設計学で大切なことは、細かく決められた数値よりも、如何なるスタイルであっても顔の形を意識してスタイリングをすることが大切であると思います。もちろんそれは、ファッションヘアやレディースヘアであっても同じことです。
 但し、先ずは数値です。そして繰り返し設計図を書いてみることです。そうすることで感覚が養われ、応用につながります。



基礎刈実際編 P19~25) 長めスタイルへの移行
 平成27年4月9日 第11回

 前々回の第9回では、「短めスタイルへの移行」というテーマで、ロングからハーフロングまで移っていくまでの技法等の変化を述べました。今回は逆にミディアムから、長いスタイルに移行していく変化について述べさせて頂きます。








 図aはミディアムの運行線で、図bはロングです。ロングはミディアムに比べるとカット面も下がり、技法もそれに合わせて変化しています。図cは、更に長くなり、スタイルでいうとニューフォーマルです。連続刈の部分も殆どなくなりました。しかし、髪際部分には、角処理はあります。長さに伴い黄色の面と緑の面が、残ってはいますが、退化したような感じです。図cは、グラデーションカットのようなスタイルです。掬い刈で切るのか、スライスをとって切るのかは、当然技術者の選択です。
 このように考えてみると、ミディアムを基本に長めのスタイルも、短めと同じように、ミディアムの応用で出来ることが、解ると思います。


 写真e・fは、その事例です。これもミディアムカットを応用して、掬い刈でカットをしてみました。変化させたところは、後頭下部の掬い刈を、ややレイヤー状にしたことと、後頭部の掬い刈は、少し残し気味にしたことです。(掬い刈については、原則集33頁に説明が記載されています) また耳前部は、もみあげを残すため、剪髪角度を立てて、一旦レイヤー気味にしました。側頸髪際部も同じくレイヤースタートです。


 写真gには、その運行図を入れました。但しこれは、ベースのカットですので、その後全体に削ぎを入れてあります。



理論編4(P4)、40(P15) 原型観測
 平成27年4月4日 第10回
 
 原則集4頁・15頁に原型観測の大切さと観測の仕方が記載されています。設計学では、側面の頭部の形を突出・普通・欠損型の三つに分けて、それぞれに対応する設計の仕方がまとめられています。
 原型の観測は、如何なるスタイルであっても必要です。「原型観測なくして設計は立てられない」、とも言えると思います。それはレディースヘアであっても然りです。
 a
 図aは、レディースヘアのショートレイヤーやグラデーションをカットする場合の方法の一つです。図の赤線は、奥行きラインです。バックを切る際、サイドの毛に合わせてここにガイドラインを作ります。そしてその下は、タイトに、上の部分は、必要な丸みを持たせます。そうすることで奥行き感が出て、メリハリのあるスタイルになります。
 このカットは、自然にいい形になるのですが、但し原型を意識しなかったら大失敗もします。例えば、女性で突出型の場合、原型としては、奥行きがあり、いい素材であると言えます。しかし、図のようなカットをした時に、赤線の奥行きラインを無意識に切ってしまうと、写真bのように横から見てネープが窪んでしまいます。それは写真cの点線の位置にステップのような毛のたまりが出来てしまうのです。




 こうなってしまったら、直すには、その上か下を切るしかありませんが、そのステップを馴染ませるには、かなりショートになってしまいます。つまりこれも原型を把握しなかった場合の失敗です。
 もちろんこの写真は、ウィックですので突出型では、ありません。敢えて奥行きラインを短くし、この状態を作ってみました。
 よくニューヘアの勉強などでも、カットシステムをきっちり統一して、実習をしますが、実際人間モデルで切ってみると、結果が変わって来ます。ウィックだけで勉強していると固定したカットシステムが形を作ると思いがちですが、実際には、求めるスタイルの結果を得るためには、原型や素材の条件によって、カットを変えていくことが必要です。
 もちろん観測は、原型だけではありませんが、先ずは原型観測が大切なことは、原則集で述べられている通りです。



基礎刈実際編 P19~25) 短めスタイルへの移行
 平成27年4月3日 第9回

 原則集19頁からロング・ミディアム・ハーフロングのカットにおける注意点の記述があります。また、それぞれの技法は、30頁からの技法編に説明されています。
 ロング・ミディアム・ハーフロング、それぞれの長さと共に、変化するカット技法等の違いを知ることで、その範囲に納まる様々なスタイルのカット法を理解することが出来ます。そこに接合部のバランスを変化させることで、スタイルは数段幅が広がっていきます。




 写真a・bは、昔懐かしい“慎太郎刈”です。最も、懐かしいと思う人は、ある一定の年代から上ということになりますが・・・。その慎太郎刈の今風アレンジ版です。これはサイドは、ハーフロング的な技法で、バックは、短めのミディアムです。








 図c・d・e・fは、ロングからハーフロングへと、徐々に長さが短いスタイルとなっています。髪の長さと共に技法や櫛数が変化していくことがわかると思います。写真のスタイルも当然この範囲の中に含まれるスタイルです。
 カットを学ぶ順序としては、定石ともいえるロング・ミディアム・ハーフロングを丸暗記することが最初の段階ですが、次のステップとしては、それらをすべて分解して、自由に組み立てられるようになると、カットレベルの幅は数段広がっていきます。そのためにも、長さによるスタイルの移行を理解すると良いと思います。



理論編17 P7 頭髪の重量と弾力
 平成27年3月29日 第8回

 原則集7頁に図aと共に、毛髪の重量と弾力の均衡を図ることの大切さが記されています。ヘアスタイルを創る際、どの部位においても、必ずそのことは、長さの決定に関連してきます。毛髪に弾力があるから形が出来るとも言えると思います。今回は、毛髪の重量と弾力に関わる事例です。
 図a 写真b
 写真bは、サロンでよくあるスタイルのメンズヘアです。このようなスタイルも、かなり以前はお客様がご自分でドライヤーセットをよくされた時代もありました。しかし最近では、ドライヤーでセットをするというよりも、スタイリング剤などをつけて、梳かして終りという方がほとんどです。ここでは、そのような場合の天頂部をカットする時の、一つの考え方のお話です。
 写真c

写真d

 写真cは、カット前の状態です。見ると毛渦の毛が立っています。このようなことはお客様でもよくあることです。そのような場合の天頂部を切る目安として、写真dのように1の前髪と、2の天頂中心点と、3の毛渦の3点に基準を創り、それを繋ぐようにカットします。
 その際、1は、フェイスラインを作るのに大事な個処ですので、その形が創り易い長さを決めます。次に2は、天頂部の長さを決める場所ですので、お客様の好みや技術者のデザインで長さを決めます。私のサロンでは、このようなスタイルは、2の位置の長さをカルテに記入して置きます。
 そして3ですが、ここが今回のテーマです。毛髪の弾力を考えて収まる位置でカットをします。この写真のような状態では毛渦は、ほとんど切れません。前髪も短いので整える程度にします。ここでは天頂部を、2cmほどカットをします。黄色の点線がカットラインです。ネープも長いので黄線の位置でカットをします。
 写真e
 写真eが仕上がりのスタイルです。これなら毛髪が立つこともなく、天頂部はお客様の希望通りに短くなっています。
 但し、これは、前述したようにドライヤーなど使わなくても、毛髪が収まるようにすることを優先させた切り方です。ということは、常にビシッと寝かすのであれば、これでは毛渦にだぶりが出てしまいます。あくまでもサロンヘアとして自然な状態で形を創る場合の考え方です。



技法編 P66 天頂部の剪髪角度
 平成27年3月27日 第7回

1、第4回原稿について
 本講座、第4回の「剪髪角度とスライスの角度」について、ある先生からご指摘を頂きました。それは、左分髪ミディアムの天頂部の剪髪角度のことですが、45°に切るのは、梳かす方向に平行に切るため、と書きましたが、それはたまたま一致しているに過ぎないとのことでした。現実に、オールバックでは、後方に梳かすのに45°に切っているとのご意見でした。斎藤先生は、天頂部を丸く切るという、形を考えて45°の角度にしたのであろうということでした。
 そう言われて私も引っ掛かるものが解消しました。第4回のところにも少し書きましたが、スライスでのカットは、毛束を下に降ろしているのでスライスの方向に流れやすい、ということは言えるのですが、梳かしつけているミディアムなどは、剪髪角度と平行に毛髪が納まりやすいということは、ないということです。第4回での記載内容の間違いにつきまして、ここにお詫びいたします。但し、第4回の記事は、問題提起の意味も含めて、そのままにさせて頂きます。

2、オールバックの天頂部のカット
 原則集P66にバックの天頂部の指間刈について、図aと共に次のように記載されています。
  1)バックの天頂指間刈は、初め左分髪と右分髪における指間刈の各運行と同じコースで、左右から天頂正中線までの頭髪をカットするのである。
  2)左右の各運行とも その櫛数は 4・6分髪に準ずる
   ① 第一運行 5櫛
   ② 第二運行 4櫛
   ③ 第三運行 4櫛
   ④ 第四運行 2櫛
  3)左右の天頂指間刈を行った後、中央部の頭髪の不揃いをジグザグ運行でカットする。運行のコースは、天頂正中線上である。
  4)ジグザグ運行の体位は、後方0度に基本姿勢で立ち、両踵を浮かし両爪先を軸として両踵を左・右と回し、技術者の上体を、左45度・右45度と 交互に向き、五櫛目まで徐々に上体を反らせながら、第二節でカットするのである。
  5)天頂中央部の頭髪を地肌なりに、丸くカットするためである。何故ならば、前額髪際部から真っ直ぐ後ろに向ってカットすると、中央部の頭髪は、平らに切られ整髪をした時に割れて来るのである。
図a
 つまり、丸さを出すために左右から45°に刈り進むということです。

3、スクエアな天頂部のカット
 サロンヘアでも、四角めにカットをする場合には、45°に切るよりは、図bのようにクラシカルバックのような切り方が、効率的です。
図b

4、モヒカン系の天頂部のカット
写真c
写真d
 写真c・dは、ソフトなモヒカンをイメージしたスタイルです。このスタイルは、丸さを出すというよりは、やや三角の印象が強いので、剪髪角度を写真eのように、45°よりも少し立たせて60°程度にしてカットしました。写真fはベースカット終了時のものです。この後、削いで質感を作っています。
写真e
写真f
 45°の剪髪角度は、丸い面を出すことが出来ますが、それよりも立たすことで、このように縦方向の丸さを容易に取り去ることが出来ます。
 但し、正面からの三角形を作ることだけを優先するのであれば当然、60°よりも90°に切った方が遥かに形は出しやすくなります。ここで60度にしたというのは、あくまでも全体的な丸さも含みながら、その上で縦の線を強くするための角度に設定をしたということです。スライスでいえば、縦に近い斜めスライスと言ったところです。



技法編(P30~69) 技法と対象
 平成27年3月25日 第6回

 原則集の技法編に各技法についての解説があります。そこに技法の対象が次のように記載されています。「固定刈の対象は、ネックライン周辺、側頭顳じゅ髪際部、後頭髪際部、クリッパーラインの暈し、ハーフロング・ブロース等の短髪部位の頭髪である。P41」「掬い刈の対象は、梳かし付けられた頭髪である。P30」「指間刈の対象は、天頂部の長髪である。P60」。通常の連続刈については、技法編には記載はありませんが、掬い刈の下の部分です。
 サロンでのヘアカットは、スタイルも様々です。そのスタイルにフォルムをイメージし、そこに的確な運行線を求め、通常であればその線に沿って技法を宛がいます。その組立ては、お客様一人ひとり違いますが、技法を決める時の基準は、基本に沿うことです。
 

 写真aは、左の側頭部だけ刈り上げたスタイルです。ネープは刈り上げずに、長さを残してあります。女性ですので、可愛さを出すために、もみあげも残しました。このカットをした時の技法は、写真bに描きましたが、赤線は、固定刈。黄線は連続刈。青線は、掬い刈。白線は、指間刈です。

 技法は、何センチなら何とか、毛髪の長さで決めるものではありません。あくまでもその技法で、切ろうとする毛束が正確に引き出されているかどうかが、技法を決める基準です。



技法編 (P45)扇形掬い刈
 平成27年3月23日 第5回

 写真a.bは、後頭部をミディアムぐらいの高さに刈り上げ、側頭部はロングの厚めぐらいにして、もみあげは、長く残してあります。トップは立たせるために短くしてありますが、側頭部の中段部は、動きを出すため、長さを残し気味にし、削いで軽さを出しています。フォルムとしては、側頭部の接合部から下を開き気味にして、接合部を少し残すような感じにしてあります。
 本講座第1回で取り上げた、「裏返しのバランス」もデザインの一つですが、このように重心を前に移した、逆のバランスも、また一つのデザインです。
 今回は、このスタイルをカットした時の側頭部第1運行に関わる事例です。
 a




 原則集P44~46に、扇形連続刈と扇形掬い刈及び、その上の45度方向の掬い刈についての記述があります。扇形連続刈は、平面を作る技法です。45°方向の掬い刈は、丸さを作る技法です。その中間の扇形掬い刈は、上下の繋ぎを作ります。
 その中の扇形掬い刈ですが、原則集P46には、写真cの赤い線での運行が説明されています。つまり、扇形掬い刈45°の後、櫛を斜め上にずらし、45°方向に掬い刈をします。
 原則集の言葉では、左側頭部ですので、次のように記されています。 「扇形掬い刈の45度が終り、櫛の軸を櫛の中央から、歯と柄との境に移動してから45度方向に運行する。」ということですので、4~5cmの移動になります。
 今、日技会では、この技法ではなく、改正のカット方法を用いています。これは、黄色の線のように扇形掬い刈で移動をさせ、45°方向掬い刈までの間に、より丸さを作っていくためのものです。このように基本のカットも、今日まで改正が繰り返されてきました。その際、大切なことは、なぜ改正をしたのかの理解です。理由の理解は、技術の習得を深めます。
 それともう一つ大事なことは、改正以前のカットも知っておくと、サロンでのカットにおけるレパートリーが大きく広がるということです。

 私は、時々赤い線のような運行、即ち以前の扇形掬い刈を敢えてすることがあります。この写真のスタイルもそのように行いました。そのことで接合部を残し気味にし、側頭部中段の長さを残すことが出来、写真のような質感を作ることが出来ました。

 温故知新。カット理論の変遷の歴史には、本当に学ぶところが多いと思います。私にとっては、その学びも理容師としての楽しみの一つでもあります。



理論編34(P13)剪髪角度とスライスの角度 平成27年3月14日 第4回
 原則集13ページ、34の5)・6)に次のような櫛の運行理論についての記述があります。
 「45度以上に櫛を立てた場合には、上の方の頭髪が短くなりやすい。また、45度以下に櫛を寝かせた場合には、上の方の頭髪が、刈りきれずに残りやすい。45度運行は、剪髪角度・運行角度とも同じで、上下・左右、何れの頭髪にも良くなじむようにカットが出来るので、柔い線が生れる。
 櫛の角度が立つと上が短くなり、櫛の角度が寝ると上が長くなりやすいものです。明確な例が耳前部です。ロングの耳前部の剪髪角度は、30°ですが、ロングよりも刈り上げ幅が高いミディアムは45°です。上部が短いミディアムは、剪髪角度がロングよりも立っています。
 これとよく似たことに、ファッションカットでのスライスの角度があります。スライスの性質は次の通りです。
 縦に切って横につなぐ縦スライスは、縦に線が出て、横に丸みが出やすくなります。縦スライスは上が短くなりやすいスライスでもあります。
 横に切って縦につなぐ横スライスは、横に線が出て、縦に丸みが出やすくなります。横スライスは、上を長く残しやすいスライスでもあります。
 斜めに切って斜めにつなぐ斜めスライスは、縦にも横にも丸みが出ます。
 このように、剪髪角度とスライスの角度は、ほとんど同じであるとも言えます。

 スライスには、もう一つ性質があります。それは毛髪はスライスの方向に流れやすいということです。逆に言えば流したい方向にスライスを取るとも言えます。
 これもスタンダードヘアでも共通する部分があります。一つは側頭部第5・6・7運行です。この運行は剪髪角度が45°ですが、梳かす方向も、ほぼ同じような方向です。もう一つは天頂部です。ミディアムは45°後方に整髪しますが、天頂部の剪髪角度も整髪方向と平行の45°です。
 但し、これは私感が入っているかも知れません。私がこれまで受けてきた指導の中では、天頂部の45°は、整髪方向と直角に切ったら段が出来やすいので、平行に切ると言うことでしたから・・・。スタンダードカットは、梳かしつけるという感じですので、流すという感覚とは、異なるかも知れません。

 いずれにしてもスタンダードカットでいう剪髪角度も、ファッションカットなどのスライスの角度も、切る角度そのものですから、共通しているのは、当然のことです。

 ◎縦スライス主体のスタイル
  
◎横スライス主体のスタイル
 
◎斜めスライス主体のスタイル
  




基礎刈実際編15(P22) 後頭部を構成する3つの面
 平成27年3月6日 第3回


 前回、側頭部を構成する面について記載しましたので、今回は、後頭部に於けるカット面について述べさせて頂きます。


 写真a・bは、刈り上げないで耳を出すような長さのスタイルです。サロンのメンズスタイルでは、最も多い長さと言えるのではではないでしょうか。このスタイルのカット面も、写真Cのように、 ミディアムカットと同じフォルムです。即ち、平面的に立ち上がる黄色の部分があり、その上に 立体的な緑の部分があります。最下部の赤い部分は髪際の処理の部分です。

 但し、長さがありますので技法は、ミディアムとは異なり、連続刈りの部分が掬い刈であったりします。
 それと黄色の部分が平面的と述べましたが、ミディアムの場合は、長さが短いですから、後頭下部は原型がえぐれていますので、結果的には、えぐれた面になります。




 写真d・e・fは、レディースのショートレイヤーリバーススタイルです。バックに奥行きを持たせ、ネープを絞り、メリハリのあるスタイルにしてあります。このスタイルなどミディアムとは無縁のように取られがちですが、構成は、ミディアムと同じと言えます。黄色の部分は平面的に取れています。緑の部分は立体的に作られています。赤い部分は、最下部の処理の部分です。(写真c)


 写真hは、メンズヘアーで刈り上げないで、耳は出して、全体的に短くしたスタイルです。少しくせ毛のお客様などには多いスタイルです。このスタイルは、後頭部全体が、平面的に取れています。

 そのため、3面構成ではなく写真iのように、主に平面的な黄色の面だけで形づけられています。技法は、ほとんど掬い刈です。この場合、立体を作る緑の部分は、不要となるか、もしくは上段に少し残るか程度になります。その下の赤い部分は、髪際部を形作る部分です。(写真i)


 後頭部でも言えることは、ミディアムでの3面の範囲の幅や長さを変化させることで、様々なスタイルに応用することが出来ます。もちろん技法も、その長さなどに合うものになります。



基礎刈実際編15(P22) 側頭部を構成する黄金の4つのカット面
 平成27年3月1日 第2回
   
 原則集には、ミディアム等のカット全体の工程の記載はありません。工程は、理容技学全書P142に載っています。原則集は、それ以前の正に原則の集まりです。その原則で組み立てられているのが工程です。
 写真a・bは、側頭部を少し刈り上げ、後頭部下部は、少し長さを残したスタイルです。男性でもいいのですが、女性のベリーショートとして考えたら、素敵なヘアスタイルになると思います。今回は側頭部の面構成について述べます。



 写真cは、側頭部のカット面を4つに色分けしてみました。
 黄色の部分は、刈り上げてあるところです。技法は主に連続刈です。生え際から立ち上がる面となります。
 その下の赤い部分は、生え際の門取りの部分です。技法は、固定刈や回し櫛です。スタイルのヘムラインを構成する個処でもあり、どのようなスタイルでも、この部分は、必ず存在します。
 上の青い部分は、側頭上部の前部であり、伏毛部で、技法は掬い刈です。上下左右の必要に応じた丸さが作られるところです。
 その後方の緑の部分も伏毛部で、技法は掬い刈です。ここにも上下左右の丸さがあります。


 この4つの面構成は、ロングやミディアムと全く同じものですが、この構成こそショートヘアの基本ともいえるものです。長いスタイルでは、刈り上げないで耳を出すようなスタイルから、短い方では、上まで刈り上げるようなものまで、ほとんどのスタイルがこの構成の応用で出来ています。
 断面で見ると図dのようになります。この図では、一番上は天頂部です。色分けした範囲は、広くなったり、狭くなったり変化します。また技法もその長さに合わせて変わっていきます。切り口は、当然、どのような質感にするかにより様々です。
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 そう考えてみるとミディアムのカット面の構成というのは、スタイルの源でもあり、“黄金の面構成”といえるのではないでしょうか。だからこそ理容師の資格を決める実技試験の科目は、ミディアムカットであり続けているのだと思います。



理論編15(P7) 裏返しの髪型
 平成27年2月25日 第1回
 
 原則集7ページに「裏返しの髪型について」の次の記述があります。
 「前上がり・後ろ下がりに刈っては不可ない。いわゆる、裏返しの髪型を、こしらえてしまうのである。元来、人間の頭は、誰しも顔の上に在るものと考えているらしいが、頭蓋骨を見ると判るように、案外、頭は顔の後ろに付いているものなのである。しかも、頭蓋骨の顔面部は、隙間だらけで貧弱なものだが、頭の方は、見ただけでもどっしりと重量感がある。第一何か支えでも付けて置かないと、後ろに引っくり返ってしまいそうである。にもかかわらず、低い所を低く刈り、高い所を高く残したとしたら、余計、後ろの方が重くなり、不安定なものになってしまうに違いない。」
 これは、接合部に於ける前後の重心のバランスのことです。ベストバランスは、ロング・ミディアム・ハーフロングの接合部の位置です。では、最近のスタイルを見たときはどうでしょうか。下にある4枚の写真は、全て同じウィックです。最近は、写真aのようなパートスタイルが流行りですが、接合部もbで解るように、いわゆる裏返しです。基本的には当然アンバランスなのですが、これは一つのファッションです。ファッションは基本を崩すことにあるとも言えます。ファッションは、見慣れて来ると可笑しいとは思わなくなるものです。
 その時、技術者の頭の中に基本的なベストバランスを知っていることが大切だと思います。知っていて崩す。これがプロの感性だと思います。
 a
 b
 写真cは、右側の2ブロック部分を下ろして見ました。裏返しということで後方にあった重心が、サイドの上の毛が被さることでイメージ的に重心が前方に移動しました。
 また写真dは、フロントを垂らしボリュームを持たせました。そうすることで重心としては、前後のバランスが保たれ、裏返しの刈り上げはそのまま出ているのですが、全体的な重心のイメージが強くなり、重心が後ろにあるということが目立たなくなりました。
 c
 d
 このように接合部だけでなく、スタイルの重心の位置を考えるとデザインも広がり、様々なスタイルを楽しむことができ、お客様への提案の幅も広がります。


 はじめに
 平成18年11月に開催された第100回全国研修会において、参加された方に“カッティング原則集”(以下・原則集)という記念誌が配布されました。これは元々水島秀幸先生と星野亀興三先生とで、昭和42~46年頃のの間に作られた手書きの貴重な資料です。その本の中に現代のサロンヘアに通じるヒントが沢山入っています。その中から私の気づいた項目をこの講座にまとめて見たいと思います。
 なお、この講座の目的は、原則集を理解することではなく、原則集から得た知識をサロンヘアに活かし、サロンでのスタイリングの技術レベルを上げることにあります。にも拘らずタイトルに「原則集を読み取る」としたのは、私のこの本への愛着です。私はこの本に接していると何か「悠久のロマン」のようなものを感じます。読めば、昔の名人に出会えるような気がします。そういう意味では、原則集は、理容技学全書及び誌上斎藤講座と共に、私のバイブルです。

 このページでは、最新発表分のみを掲載しますが、それ以前のものは、パソコン用のページで見ることが出来ます。
http://nichigikai.com/html/tk006.html
 なお途中、気づいた点などありましたら私まで、メールでお知らせ頂けると助かります。(上記タイトルの下のアドレスから送信できます)

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