毛利佳正の縮毛矯正講座
前回までの特別講座は、パソコンホームページから見ることが出来ます
http://nichigikai.com/
 
   
     
 『毛利佳正の縮毛矯正講座』では、公開質問を受け付けています。質問に対する答えは、担当の毛利講師が本講座内でお答え致します。質問は、情報システム部で受け付けます。質問はこちらから↓
     縮毛矯正質問受付
 質問は、日技会員に限ります。メールに質問内容と本部名・お名前も明記して下さい。但し公開時には、イニシャルのみ、または在籍本部名のみにて表示します。
第16回 平成27年8月17日
 ラインパーマ
当店では縮毛矯正のお客さまが多いのですが、ここ1年くらいでバッサリとカットする方がとても多かったんですね。
当然ですが、パッツンとした毛先になりがちですので、そのままじゃスタイルにならないわけです。
そこで活躍するメニューを紹介します。
施術に関しては、言葉や文字でお伝えできるようなものではないので割愛しますが、カールでもなく、ウエーブでもなく、“ライン”を作るパーマです!
“出来るんだ!”という可能性としてご覧いただければと思います。
それから知っている方もいると思うのですが、ネット上では「ストパン」という技術が理美容師さんの間で盛り上がっていますが、その施術は自分も見たこともないですし、内容も知りません。パクリではないので!wwwww

施術上の注意点をいくつか・・・
☆毛先まで還元できる余力が毛髪に残っている事!(最重要)
※同時施術はここが一番の難関です。判断が付きにくい場合は、矯正をすべて終わらせてから、改めて薬剤処理から入ります。
☆曲げられるだけの還元、行き過ぎない還元を設定出来ること!
☆形成に必要な水分コントロールがしやすい中間処理が出来ること!
☆曲がることができるカットであること!

では施術例を見てください。
お客さまは10カ月〜1年サイクルで矯正をされています。ノンカラーでリッジ、毛髪強度共に強く、アルカリチオのハードタイプの薬剤で矯正してきています。
カット後のビフォーです。






プレカットでベースと7、8割くらいの削ぎまでやってあります。
薬剤選定はこれまでと同じですが、既矯正部は新生部よりも減力した薬剤で塗り分けます。
タイム後、中間処理はアルカリカラーの研修会でもご紹介したアルキルカチオンコンプレックスです。保水性が高く保てるようにこれで処理をします。
自分の基本通りにツインブラシでブローを行い、ストレートアイロンで処理します。
アイロンの際には、新生部用と既矯正部用(布巻き)の2本のアイロンを用意して、熱入れを変えます。新生部はカッチリと伸ばす為に2スルー、アールを入れる部分は布アイロンで1スルーという感じです。
全体にストレートアイロンを処理したら、アイロンパーマ用のカールアイロンでアール処理です。
そのままオキシの2剤で酸化処理。カール固定でロッド巻きなどは意味がないので一切しません。
2剤お流し後、ハンドドライして削ぎなどカットの調整を行い仕上げます。

アフターです。






どうでしょ?
うちでは「ラインぱーま」っていうメニューです。w
ちなみに直毛や跳ねやすい方でストレートラインを求める方にも効果的な方法だと思います。


第15回 平成26年8月29日 

 還元状態のチェックについて

 
参考になりそうなリアルな画像を撮ったので紹介します!
 矯正の授業でほぼ100%質問されるのが1剤還元処理後のチェックです。
 1剤のチェックでどのくらい伸びていれば???ってことですね。
 答えは“伸びてなくて良い”です。
 伸びているか?よりも還元が来ているか?のほうが大事です。

 お客さまのビフォーです。
 細毛、ノンカラーでリッジはかなり強いのですが顔周りは極端に細毛でスチールウールのような強いクセです。前回3か月前ですが中間はウエーブバックしています。

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 薬剤処理は根元新生部・ウエーブバック部分・顔周りの弱い髪などすべて薬剤のパワーを変えて塗り分けしています。ウエーブバックから先はプロテクション剤で完全保護です。
 途中割愛しますがブロー途中のウエット状態です。
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 今回はこの部分を参考にして欲しいと思います。
 還元とともにアルカリでも少し軟化しているのでクセはやや緩んでいますがリッジは残っていますね。

当然ですが縮毛矯正は“前処理還元”ですから形成工程は還元後です。なので1剤処理完了時点でクセが伸びている必要は全くないわけです。その後のストレート形成工程でクセを伸ばせるだけの還元が完了しているか?が大事なのです。
 これを“引っ張って○○%伸びる”とか“クセが伸びていないとダメ!”という事だけを参考にしていたら安定した還元処理は見えてきません。
 薬剤のスペックということをパーマ系の講習会ではお話します。まあ、受講生の皆さんは拒否反応なのか意識を失う方も多いですけどねwww。

 最初は難しくても本当はそういう知識をきちんと学ぶほうが思考がまとまり安定した還元処理ができるようになってくるはずです。
 自分の矯正技術においては、、、
 “このクセ、このリッジでこの毛髪強度ならpH○・アルカリ度○・還元剤濃度○%で還元剤はこれこれ・・で、還元タイムはこのくらい・・・”というように理論に基づいた“経験と勘“によって成功も失敗もその判断基準はより明確になるわけです。

 ではウエットでクセが出ていたものをブローした状態です。
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 水分がたっぷりと髪に入っている状態からブラシでストレート状態を維持して一気にブローで水分を抜きます。還元が適正に達していない場合はこのように伸びません。あと、例外でブローが効きにくいアイロン優先の髪質もボワボワしたりして伸びにくい感じがします。
 前者の還元が適正に達していない場合はブローを中断し、冷温風のドライに切り替えてアイロンメインの施術に変更します。後者のブローが効かない髪質は経験から判断でブローは追いすぎない感じにします。
 適正にしろ不足にしろ還元された状態を一切無駄にしない形成工程の技術力は大切です。
 ブロー後はアイロン→2剤→バッファーなどの後処理をしてハンドドライです。
 カットは無しなのでアウトラインが微妙ですが・・・ww
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 このお客さまがこの長さをキープしていくとして根元に施術した状態を3年半程度はダメージとして良い状態を維持させる必要があります。
 その場だけ伸びれば良いという意識ではやり過ぎになり毛先は常に枝毛だらけのボソボソになるかも知れません。
 ということで今回は1剤処理後、チェックやウエットでクセが出ていても還元さえ適正に来ていればきちんと形成工程を行い十分に仕上げることができる!ということを認識していただけたらと思います。


       第14回
       平成25年10月16日
 アルカリ矯正
 前回はスピエラ矯正をご紹介しました。さて、今回はアルカリ矯正です。酸性矯正のスピエラを紹介した後になんでまたアルカリ?って感じですけどね!笑!
 この講座でお話しした基本的な縮毛矯正の方法とは少しアプローチを変えています。これもスピエラ同様で詳しいことをココではお話出来ませんが、縮毛矯正を成立させた上で毛髪強度を最大限に維持する方法になります。

 それではビフォーです。前回の矯正は2年前です。カラーは1,2カ月毎に明るめのグレイカラー。毛髪強度はかなり低い方だと思います。また、毛髪サイクルが異常であり、セニングのように見える部分はすべて新生毛の毛先です。全体の毛髪強度の低さや脆弱な新生毛ばかりなのでちょっとのオーバーパワーでビビになる可能性があります。皆さんはどのようなレシピとアプローチをしますか????
 
 
 
 先日、カラーで初めてご来店し、「矯正したいのですがどうでしょうか?」ということでした。今までのサロンでは毛髪強度も弱いためにカラーダメージも考えて矯正はしないほうが良いとアドバイスされていたようです。
 ある意味、それは正解だったのでしょう。一般的なサロンの矯正技術では先ほどもお話しした通り、ビビリなどのトラブルになる可能性は高いです。担当の美容師さんは薬剤やシステムに頼らず、自身の力量で判断したのだと思います。
 状態的には毛先まで還元処理しないと収まらないので、根元〜毛先までを還元コントロールしています。ph9のチオ系とph7のシス、チオグリセリンの薬剤を毛髪強度に合わせてミックスして根元から毛先まで3種類の薬剤で5段階に還元をさせています。
 薬剤タイムは13分。中間のシャンプーやコンプレックスを行い、アイロン前のドライはトップ、フロント、フェースラインの髪の弱い部分を強熱のツインブラシでブロー、他は弱熱+冷風でハンドドライ+毛先だけ強熱のデンマンブローでドライコントロールしました。
 ドライ後はシークレットなプロセスを行い、アイロンは180度で2,3スルー、毛先だけ数スライスまとめて布アイロンです。このあたりは講習のみでお伝えしております。
 オキシ2剤で3分、お流ししてドライのみの仕上がりです。カットも無しです。
 毛髪のダメージは最低限になっていると思います。強度を維持している為、艶感や根元の立ち上がり、ハリコシも十分良い状態ですね。お客様は年齢的な加齢毛とダメージで縮毛矯正を諦められていたのですが、久しぶりにキレイなストレートになって大喜びでお帰りになりました〜!
 
 
 
 

 酸性矯正だろうがアルカリ矯正だろうが求める結果は同じです。なので酸性だから良いとかそういう事は一切ないんですね。薬剤や毛髪のことを考え、それを生かす知識とひらめきで結果は出てきます。そしてそれらは特別講座のヘアケアやこの縮毛矯正のなかにすべてを記しています。算数で10という数字の答えにするアプローチは沢山ありますね!5+5=10だけ出来るようになっても意味がない事が皆様もおわかりだと思います。
 こういう機会に色々考えてみていただけたらな〜!と思います。それではまた!


       第13回
       平成25年9月14日
 スピエラ矯正
 今回は、研修会のメンズアイロンエボリューションでも紹介した、「スピエラ」(ラクトンチオール)という還元剤を使用した縮毛矯正です。以前から複合還元によるスピエラ使用は普通に行われていましたが、スピエラオンリーの矯正をどんなクセにも行うということは過去ありませんでした。
 ・・・というよりもスピエラオンリーでクセが伸びるわけがないという概念がありましたし、確かにクセを伸ばすにはそれ相応の知識と応用が必要だったのです。そんな中、大阪にある縮毛矯正専門店「ASエース」というサロンの岸口新志さんという美容師さんがスピエラオンリーの矯正を研究し、今年の7月から全国的に講習を始めたところです。
 自分も「GMT」(グリセリンモノチオグリコレート)という還元剤で矯正の研究をしていて、スピエラと似た様な性質の剤であったことから、岸口さんともそれ系の薬剤での矯正施術に関して情報交換をしながら現在のスピエラ矯正が出来あがって来たわけです。
 ここでは、すべてのノウハウをお伝えしたいのは山々なのですが、、、、何せ最先端であり、情報としての価値と考案者個人の利益を考慮するとお伝えできる内容は深くは出来ませんが、その最先端の縮毛矯正の片鱗だけでも会員の皆様にお伝えしようと思います!興味を持った方は詳しい施術をしんびよう出版発行のマルセル12月号で発表予定ですので是非ご覧くださいね。それではスピエラ矯正についてお話ししますね!
 スピエラとは酸性領域のphで活性する還元剤であり、アルカリのように毛髪の膨潤をさせずに還元ができる薬剤です。アルカリダメージを避けることができる為、毛髪への負担は軽減されることが容易に理解できると思います。ただ、還元効率は非常に高く、10分程度で強烈なリッジの縮毛をストレートに出来る還元が完了してしまうほどです。
 しかしながら毛髪が膨潤していないということは、還元されてもコルテックスの移動や変形する隙間もあまりなく、「伸ばす・曲げる」という作用の為には、時間や工夫が必要で実際の形成が難しいのです。このようなことから「スピエラは弱い薬剤だ!」「金髪などハイダメージ用」というイメージが先行していたわけです。
 既にピンとくる方は酸性領域で還元、形成出来ることがその仕上がりや経年変化による劣化に対してどれだけ有利であるかはイメージできますよね???それでは、実際の施術のビフォーアフターをいくつかご覧いただきましょう!

★ケース1
 【ビフォー】
 このお客様は3〜4か月サイクルで矯正しており、普段はHクラスの矯正剤で28分程度の還元時間で伸ばしている方です。アルカリダメージに非常に弱く、その割にリッジも非常に強く伸びにくいタイプです。しかも、ダメージの進行も早い感じで、バッチリ伸ばそうと思うほどにダメージは増してしまいます。薬剤の塗り分けも非常に繊細に行う必要があり、簡単にビビリになってしまう難易度のかなり高い髪です。
 
 
 
 【アフター】
 毛先まで一発塗布です。タイムは15分。諸々のストレート形成工程を経て、仕上がりです。アウトラインは少しカットしてありますが、ブロー無しのドライ状態です。今まで薬剤の繊細な選定と塗り分け、ストレート形成のテクニックを駆使しても理想の仕上がりには及ばなかった髪が、今までの苦労を踏みにじられるかの如くすっきりキレイに仕上がってしまいました。大笑!!当然、アルカリダメージがない分、髪は生き生きとした動きや質感を放っています。
 
 
 

★ケース2
 【ビフォー】
 このお客様は静岡からのご来店の方です。遠方な上に小さいお子さんがいることもあり、前回から1年半くらいです。途中、他店での乱雑なカットで中間にも沢山セニングが入っており、ウエットにするとセニング部分にクセが強く出てグジャグジャになってしまっています。リッジは見た目より強いわりにやはり非常に弱い髪で、通常Hクラスの薬剤とSクラスの薬剤を1:2くらいの弱めの設定でギリギリまとめる施術していました。
 
 
 
 【アフター】
 今回はスピエラで毛先まで一発塗布で10分。仕上げは勿論ドライのみ、オイルなども一切付けていません。今までの自分の矯正の研究をバカにされたかのように毛先まですっきりとなめらかに矯正出来ました。汗!!!
 

★ケース3
 【ビフォー】
 メンズです!矯正は初!多毛で、ゴワゴワとしたクセでセニングも結構入っています。カラーダメージで毛髪強度も弱っています。通常ならHクラスとSクラスを1:1で20分程度の還元が必要なクセです。あとはメンズヘアということもあり、ピンピンにならにようにアイロン操作など気を使うところです。
 
 
 【アフター】
 今回はスピエラ15分、仕上げは勿論ドライのみ。アルカリであれば、どうしてもアルカリダメージによる硬さが出やすいことによるセニング部分の収まりの悪さや髪のしなやかさが失われがちですが、酸性域での還元により髪の強度はかなり維持できる為、自毛の弾力と矯正されたことによるしなやかさが出て自然なストレート状態に仕上がっています。
 
 
 

■ケース4
 【ビフォー】
 新規のお客様です。ノンカラーで前回の矯正は1年半前くらいですが、キレイに伸びていなかった感じです。既矯正部はダメージと伸びてないぼそぼそが混じっていて毛先は濡らすと軟化してしまっています。このクセなら通常はHクラスの薬剤で25分程度の還元が必要になります。
 
 
 
 【アフター】
 スピエラ15分、毛先手前まで塗布しておいて、タイムを入れてから毛先塗布です。仕上げはドライのみ!乱雑なカットとダメージで毛先の収まりが若干悪いですが、ビフォーの状態からすれば十分な仕上がりだと思います。勿論、軽くブローしてオイルなどを付ければキレイに収まってしまいます。
 
 
 

 4つのケースを紹介しましたが、すべてのケースで特別に中間処理や後処理はしていません。また、カラー・ノンカラー・ダメージ(過度な軟化はNG)に関係なく、薬剤も同じで還元時間も10〜15分で出来てしまいます。
画像ではわからないのですが、スピエラ独特の髪のしなやかさがあります。これは実際に施術した技術者とお客様だけが実感できると思います。
 ただ、勘違いして欲しくないのは「普通のアルカリの剤より、スピエラのほうが良い!」などということではありません。より、守備範囲を広げられる技術として捉えています。
 自分はスピエラやGMTでの矯正を通して、今までのコールドパーマ、デジパー、アイロンパーマ、、、すべての還元剤使用の施術がレベルUPし、様々な理論がキレイに繋がりました。アルカリ矯正の更なる進化も出来ています。
 最後にスピエラ矯正のメリットデメリットをお伝えします。まだまだこれからの矯正なので様々な創意工夫がされてくると思いますが、現状において自分が感じるところです。

■メリット
 1・アルカリダメージがない為、自毛の強度を最大限維持することが可能
 2・履歴の不明瞭な状態に使いやすい
 3・アルカリカラーと同時施術がしやすい
 4・加齢毛やハイトーンカラーなど毛髪強度の弱い髪に使いやすい
 5・やわらかい伸び感なのでショートヘアでもなじみやすい
 6・前回部分とのオーバーラップはアルカリに比べて余裕がある
 7・強度が保てる為、後のパーマ等の対応がしやすい

■デメリット
 1・1剤処理でのプロテクションクリームなどでのダメージコントロール(薬剤の減力や保護)がほとんど効かないので薬剤が付いたら必ず還元してしまう。(現在研究中)
 2・即時還元するほどに強く、早い還元作用があるので1剤お流しの際に毛先など注意が必要。
 3・形成工程が難しく、毛髪科学や形成理論などの知識と工夫が必要。
 4・毛髪内部に還元が広く拡散してしまう為、酸化処理が不十分になりやすい。
 5・酸性と言っても還元力が強いので、クタクタにダメージしている髪には使えない

 ざっくりとこんな感じでしょうか・・・
 現在の社会的状況では将来的にカットサロンはどんどん淘汰される可能性が高いと感じます。
 自分も今回ご紹介した矯正のみならず、お客様にしっかりアピールできる武器を備えるべく、さらなる技術研鑽を楽しもうと思います!

 ※スピエラ矯正に関しては、日技会では現在のところ毛利が講習可能です。
詳しい内容は講習受講者にのみお伝えいたします。様々な観点でデリケートな内容なのでご理解くださいませ。興味のある方は是非一度講習を受けてみてくださいね!

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