NRG 日本理容技学建設会
 

  第88回
   2020年 今年を振り返って
     
 『自分で考える習慣』  

             東京本部 星野 弘   
          shishiza1943@yahoo.co.jp

今年も残すところあとわずかとなりました。この1年はこれまでとは全く異なる1年となりましたね。思えば1月に国内初の新型コロナウイルスの感染者が確認され、3月には一斉休校となり、4月に緊急事態宣言が発令され、政府は国民に外出の自粛を呼びかけました。
 
このような国難とも言える事態の中、私たち日技会総本部では会長が交代しました。新会長に西村幸子先生が選ばれました。東京本部はもちろん各本部とも協力して組織を強化し、教育指導事業体制の確保と、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策の取り組みには、気迫が伝わってくるようです。
 コロナ禍でまだまだ油断はできない状況です。引き続き、気を引き締め、全国会員のためにもイマジネーションというものを膨らませましょう。これからは特にそういうことが求められてくると思います。どうか頑張ってください。

 
私がこの道に入ったきっかけは、やはり父が理容をやっていたことですね。だが、理容と名がつけば、仕事しているだけじゃ済まない。いろいろ勉強もあるわけです。ところが、私はこの勉強というのが大嫌いだったのです。
 
当時、父の経営する店にはお弟子さんが多くいて、お客様に恵まれ、毎日毎日夜遅くまでお仕事をして忙しかったと記憶しています。私にはこれが良かったのです。お店に足を運んでくださるお客様、応援してくださるお客様のおかげです。それは技術の基本がきちっと備わっているからで、これは理屈ではない。これこそがモノづくりの基本なのだと子供ながらにそう感じていたのです。これを自分の体に染み込ませたい「そうだ、後を継ごう」と、決心した……というわけです。
 
中学校を卒業し、中央高等理容学校に入り理容の基礎基本の重要性を学びました。卒業後、吉田善七先生の弟子になったのは、16歳の時でした。師匠と生活を共にしました。これが結果としてよかった、と今になって思います。日々の生活で、先生のさりげない一言ひとことに「師匠はどうしてこういうことをおっしゃっているのだろう」と、深く考えます。このおかげで、自分で考えるという習慣ができたように思います。
 先生は技術そのことではあまり型にはめることなく仕事させてくださいました。よほど目に余るようなことでない限り「ほう、こんなやり方もあるのか」といった教えでした。
 どちらかと言えば、人間としての「躾」のほうが厳しかったように思います。日頃の挨拶はもちろん、勉強会など始めるときには「お願いします」、終った時は「ありがとうございました」と再び礼をする。ただし師匠は、そうしたことを口でうるさく言われるタイプではなく、その姿をご自分で示して教えるという方でした。だから、私は師匠の姿を見て身につけて育ったと言ったほうがいいかもしれません。今だから思いますが、どんな世界でもそういうことを疎かにしていたらなかなか上にはいけないのだろうなと思います。私の場合、十代の時に先生に教えていただき、少しずつそういう習慣がついていったのだと思います。

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