“ライム”が我が家の住民となったのは、15年ほど前のことです。ライムという名前は千葉の生家で付けられたもののようでした。名犬ということではなく、雑種の女子です。当時2才になる前でしたので現在17才で、近所の人に年齢を告げると「頑張ってるね」とよく言われています。 実は私は犬があまり好きではありませんでした。子供のころは常に猫がいて、実家はいわゆる猫派でした。というよりも「犬は噛む」と思い込んでいました。(実際、よその犬に噛まれたこともありました)ですから好きではないというよりも、犬は怖いものと捉えていました。 そんな私ではありますがライムが来て「猫派出身だから・・・」などと言っていられないことになりました。最初は散歩に連れて行かなくてはいけないことすら知らずに、ライムとの生活が始まりました。来たての頃の散歩中の写真を見るとしっぽが垂れています。気持ちが伝わってしまったのか、ライムにしてみたら不安だらけのスタートだったのだと思います。 しかし毎日毎日散歩をしたり食事を与えたりしていると、愛犬家を自称するのに、さほど時間は掛かりませんでした。今でこそしませんが、最初のころ毎月ビデオを撮ってDVDにして『月間ライム』なる刊行物を作っていました。最も常に発行部数は1部でしたが・・・。まあ、間違いなく‟親ばか“です。もちろんライムに噛まれたことなど、ただの一度もありません。 3人横並びでのドライブ 元々車酔いする犬でしたので、最初はあまり車には乗せなかったのですが、一度埼玉から静岡までの帰省に同行させてから、長距離で自信がついたのか車酔いもなくなりました。二年ほど前、初めて‟ペットと泊まれるホテル”に行きました。その時は私が運転で家内が助手席で、ライムも嬉しそうに後ろの席から身を乗り出し、ライムを間に3人(二人と一匹)顔を並べてのドライブでした。でもライムは無免許なのでハンドルを持たすことだけはありませんでした。 「また来年も行きたいな」と考えましたが、そのあとからライムも少しづつ疲れやすくなり、今となっては、「あの時行っておいて良かった」とつくづく思っています。 看板犬として ライムは、店の看板犬です。おとなしい性格のためか結構人気があり、道を通る人は良くかまってくれています。これまでに散歩中などを含めて「かわいい!」と掛けられた声の数は、1500回を超えるほどです。嘘です。でも150回ぐらいは言われているように感じます。 実はライムは外飼いの犬です。今時、外で飼ってるといえば虐待と言われそうですが、ハウスの環境は悪くはないと思います。雨に濡れることはほぼなく、冬は電気カーペットでホカホカ、夏は扇風機2台と常にアイスノン2個で冷え冷えです。これまで暑いとも寒いとも言ったことは一度もありません。たぶん!もっとも私の知らない犬語では結構愚痴っていたかもしれませんが・・・。 大脱走の巻 15年も共に暮らすと思い出のネタは尽きません。脱走癖が出た時もありました。一番元気なころでしたが、うまい具合にチェーンを小屋に引っ掛けておいて首輪を抜いてしまうのです。最初は焦りました。見たらチェーンと首輪だけが残っていて本人(本犬)がいないわけですから、家族中で近所を捜索です。散々探して仕方なく帰ってみたら、小屋の中で何事もなかったかのように、座っていました。「まったく心配かけやがって・・・」と思いましたが、その後も数回そんなことがありました。今時放し飼いの犬などいませんから、道を歩いているライムを見た人は多分びっくりしたことと思います。それからそのようなことはしなくなりましたが、あとになってみれば、交通事故にも合わず良かったと思います。でもご近所の皆さんにご迷惑をお掛けしたことをこの場を借りてお詫びします。しかし一度は本気でこの特技でTVに出られるのではないかとも思いました。忍法縄抜けの術とかなんとか・・・。 ライムはこの半年ぐらいで足が弱ってきて、得意の「人間には絶対に負けない走り」が出来なくなってきました。以前は、私が早足で歩くとそれよりもやや早く歩こうとしました。そうなると私にも人間としての意地もあり、「犬如きに負けたくはない」と小走りをすると、ライムは更に速く走ります。ついに私も全速力で走ると、ライムは余裕で私の前を走ります。最後は、人間の負け(というか私の負けですが)でいつも終わっていました。しかしそのライムのライバル心も少しずつ衰えてきました。 奇跡よ起きろ 今年の新型コロナウイルスが騒がれだした頃から、ライムの足は更に弱ってきました。そして散歩の距離も少しずつ短くなってきました。犬の一年は人間の何年とか言いますが、犬の老化はとても早く、みるみる弱ってきます。 2週間ほど前から散歩も店の駐車場を回るだけになりました。散歩中の補助具も買い、距離は短いのですが、時間を掛けての散歩になりました。そしてここ数日は立っていることも大変になり、看板犬のお仕事も引退し、今はエアコンの下で寝ていることがほとんどです。 先日も食べたものを吐いてしまい、いつも行っている動物病院に連れて行ったところ、先生から家内が「腎不全を起こしており、覚悟はしておくように」と言われてきたそうです。家内のライムに対する溺愛ぶりは、私のそれを遥かにしのぎ、先生も気を使ってのことのようでした。9kgあったライムの体重も急激に6kgになり最近抱き抱えると、その軽さに驚くほどです。 今は食事もあまり受け付けず、ほとんど寝たきりになってしまいましたが、布団に横たわっているライムを撫でていると、あまりにたくさんの思い出がよぎります。そんな時、弱々しくこちらを見ているだけのライムですが、もしかしたら元気だった頃を思い出しているのかも知れません。 写真 15年前の緊張のライム。(千葉に帰りてぇ!) 雷・花火が嫌いで家の中で怯えてました。 ドックランでは、ちょっとなじめず、 しかし看板犬の仕事はすぐから始まりました。 雪は歌の通り嫌いではありません。 雨の日はカッパで、 看板犬としての仕事は結構忙しかったです。 昔はこんなことも出来ました。(今なら二足歩行が出来る犬としてユーチューブで稼げるかも・・・) 大河ドラマが「真田丸」の頃は、六文銭背負ってると散歩仲間のおば様から言われました。(まあ、そう言われれば・・・) ビバホームでのシャンプーは、楽しいような、辛いような。(たぶん後者) まだまだ体柔軟な頃です。 黒だった目の周りもすっかり白髪になって。 ハウスが大きくなりました。でも寝ている時が多くなりました。 散歩は補助具が必要となり、 背景に「希望の虹」が、うっすら見えます。本人(犬)曰く、この時立たされるの結構辛かったそうです。 今は家の中で寝たきりです。頑張れライム!!! 朗読版 https://youtu.be/33UJVXelYX4 令和2年7月 |