東京JR中野駅近くにある斉藤会館(日技会創設者齊藤隆一先生の業績を記念して建てられた齋藤隆一記念館)内二階にある齊藤隆一資料室(伊藤祐二室長)では、古くからの歴史や文化に彩られた日技会に残されている写真や資料、また、会主齊藤隆一先生が愛用した櫛・鋏・レザーなど、数々の理容器具や技術研究資料をはじめ、先生ゆかりの品々を展示・公開しております。
それと合わせて、会創立以来これまでに研究・発表してきた技術読本などテキスト、DVD資料、その他素材など、豊富な情報内容がライブラリー(図書室)として存在しております。
日技会では、会にある多くの資料の永久保存の推進とデジタル化が必要と言う事で、アーカイブ(資料館)を検討するという方向を、総本部運営委員会で、伊藤祐二委員の提案で打ち出され、2010年に事業が始まりました。会として、文化的に重要な情報内容を保存するアーカイブを、理容業界の文化資源として位置づけ、将来的には、パソコンで誰もが閲覧できるようにすることで業界に還元できる、という構想です。
資料や情報をデジタル化して収集・保存・管理・公開する仕組みのことを、一般的にデジタルアーカイブと呼びます。CD-ROM等にデータを長期保存したり、データをバックアップする行為もデジタルアーカイブと言うことができます。
斎藤隆一資料室は今現在、小規模ながらもこのアーカイブとライブラリーの機能を兼ね備えつつ運営されています。
伊藤祐二資料室長 斎藤隆一先生ご使用の器具類
何事にも言えますが、本当に新しいものは古いものを尊重し、咀嚼して土壌とし、その上に成り立つものと、私は理解しております。資料は寝かせておくことで、発酵して、新しい文化の芽生えになっていくものです。ですから、アーカイブは、その文化の土壌を豊かにすることに結び付くのです。
最近一般的には「コレクション」「保存記録」「収集・保存資料」という意味合いが強く、公共性が高い映像、古文書・公文書・文化遺産など様々な媒体の資料や情報内容を後世に残しておくこととされております。
これからの世の中は、文化・芸術などのソフトパワーこそが大きな価値をもつでしょう。先人たちの努力の結晶を業界人の共有財産にすべきと考えます。その意味でも、齊藤隆一資料室は、情報を収集・保存・管理をして、その所蔵品を後世に伝えていくことに意義があるのです。
しかし、ここに大きな問題があります。その活動をどのように制度的、財政的に支えていくかが、今後の課題となるでしょう。今現在それに関わる専従スタッフは置けず、伊藤祐二資料室長のボランティアで資料の整理などに取り組んでいるのが実情です。
これからも、室長を中心に、貴重な資料や映像、写真をデジタル化して後世に残すためのプロジェクトを設立する機運を高め、今すぐ理想の形にはならないにせよ、事業を継続して頂き、近い将来には、是非実現させてもらいたいものです。
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