タイトル:理容室で体験型ビジネスを構築する。 熊本本部:佐藤実行
明けましておめでとうございます。熊本本部会員の佐藤です。
今回は体験型店舗づくりについて話していきたいと思います。
最近の消費者の傾向として車やブランド品など物を買う消費型からゴルフ、釣り、旅行、ディズニーランドや映画、コンサートなど経験を買う体験型へと変化していると聞きます。
今は大抵の物は手に入る時代ですし、若い人は車にも余り関心が無いらしいです。
仕事よりも自分の時間を大切にして、友達と遊んだり、美味しい物を食べたりするのが最近のライフスタイルだそうですね。
理容室はというと、カットして身だしなみを整える事が主な目的ですが、心地良いシャンプーや顔剃り、今では普通に取り入れられているスキャルプケア、フェイスケアなどもリフレッシュやリラックスを提供するサービスですね。
よって理容室も十分な体験型ビジネスと言えます。
これからの時代に沿うことになるので将来に希望が持てそうですね。
私も日技会で技術的には十分な経験を積んだので、更に体験型のサービスを付け加えたら
時代のニーズに応えることが出来るのではと考えました。
直接の施術サービスもそうですが、店内に観葉植物を置いたり、掃除が行き届いた店内、くつろげるような店内レイアウトなども経験型の重要なバックグラウンドになります。
今回やったことはそのような環境の方を整える、音楽を使っての体験型店舗にするものです。
歯医者さんやエステルームなどはリラックスミュージックが流れていますし、
ハリウッド映画や演劇、ドラマ、アニメには場面に合わせた音楽が使用されて、
音という物は心に働きかける重要な要素なので、それをお店に取り入れようと思いました。
では従来の店内で流すBGMと何が違うのかというと、
店舗に置くスピーカーの殆どがスペースの制約上小型の物になると思います。
しかし低音の量感は箱のサイズに比例しているので、中高域は再生出来ても、低音は殆ど再生する事が出来ません。
CDにはちゃんと低音データが入っているのですが、ほとんど鳴らせてないのが実情です。
何故低音が体験型になるのかというと
和太鼓の生演奏を聞いたことがあるでしょうか?
大きな太鼓が鳴らす空気を振動させる感覚、音のダイナニズムや躍動感の素晴らしさを感じたことと思います。
スピーカーに例えると太鼓の大きさがスピーカーの箱で、革を貼った部分がスピーカーコーンに当たります。音を鳴らす方法は人力か電気信号かの違いです。
中高域しか再現できない小型スピーカーではそのような表現は決して出来ないでしょう。
中高音に低音がバランス良く加わる事によって、耳で音を聞くだけでなく、太鼓のように体全体で感じるという体感型に変化できるからです。
そのようなドンというお腹に響くような音楽をお店で体感出来たらいいなと思いました。
では実際にどのようにして低音を再現したらいいのかというと、低音専用のスピーカーを付け加える方法です。
低音専用のスピーカーには家庭のシアタールームで映画などを鑑賞する時に使うサブウーハーというスピーカーシステムがあります。
極低音の30Hz~100Hzまでを再生出来る迫力ある音が出る装置です。あると無いでは映像への没入感が全く違います。
こちらをお店のスピーカーとクロスオーバーさせて使おうと思います。
サブウーハーをお店に置くことになるのですが、
ある程度箱の大きさがないと低音が出ないため、設置場所の選定が必要になります。
市販のサブウーハーはずんぐりした物が多く、そのまま置いてもお店の雰囲気を壊したり、貴重なスペースを占拠してしまうケースが多いので、
趣味のDIYを生かして設置場所にマッチしたサブウーハーを製作することにしました。
こちらはお店にオブジェとして置いている光触媒の造花です。
光が当たると空気を綺麗にする作用があるらしいですね。
下には台座があるので、ここをサブウーハーに置換したらいいと思いつきました。
低音の再生方式には密閉型、バスレフ型、ホーン型などいろいろあるのですが、今回採用するのは工作も楽で低音の増強が期待出来るバスレフ型を選定しました。
スピーカーコーンとは別に穴が空いてダクトが伸びている構造です。
スピーカーが後退した音圧を再利用する事で、より低音をブーストすることが出来ます。
最初にユニットの性能諸元を参考にして箱の寸法や容積、ダクト長などを計算していきます。これをちゃんとやっておかないとユニットの性能が十分に引き出せないのです。
寸法が決まったらCADで設計していきます。個人的には設計さえしっかりしてれば半分は完成したものだと思っています。
図面が出来たら次はハンズマンで材料を購入する段階にはいります。
低音は音圧がかなりあるため、木屑を接着剤で圧縮したMDFという物が最適です。
厚さ20ミリあり、頑強で重いです。ですが端材のため値段もお手頃です。
カット図を店員さんに渡して切ってもらいます。
業務用の機械を使うため正確な切り口が出来るのと、ある程度切ってもらうと後の工程が楽です。
家に持って帰って材料を組み合わせていきます。
スピーカーの穴をジグソーでほがしていきます。横長四角の穴は空気が出入りするバスレフポートです。
そのままでは固く感じるので、トリマーで角を丸くして馴染むようにします。
箱が組み上がったら次は塗装するための下地処理をしていきます。
MDFの切断面は凸凹になっているので、砥の粉を塗って滑らかにします。
全体にヤスリをかけて下処理完了です。
塗装ですが、お客様の目にとまるので見栄え良く仕上げたいですね。
市販のニスだとムラが出来やすいので、業務用のウレタンニスを使う事にしました。
着色剤を塗り重ね→シーラで塗料面の被膜保護→透明クリアー仕上げの三種類の溶剤を使う事にします。
塗る色ですが店内の床や壁の色から赤系が似合いそうなので赤系統のニスにしました。
下地が透けるので一回では思うような色が出ないので、合計5回も着色剤を塗り重ねることにしました。
塗装が乾いたらシーラーを塗ってから仕上げのヤスリがけ、最後にクリアーニスを塗り終わった状態です。色味も強くなって、表面が滑らかな仕上がりとなりました。
こちらが今回取り付ける直径30センチ、重量6.5KG。出力500wのウーハーユニットです。
元々カーオーディオ用として販売されている物です。
箱に信号入力用のバナナプラグとスピーカーを取り付けていきます。
内部には音の乱反射を防ぐため、吸音材を貼ります。
スピーカーに何かぶつけてしまうと傷つけてしまう恐れがあるので、木枠を作ってサランネットで覆うことにしました。
通常家庭用のサブウーハーはアンプ付きなので、自作の場合アンプが別途必要です。しかしホームでサブウーハー専用のアンプは殆ど存在しないので、同じく車用のアンプを付ける事にしました。
こちらのパイオニアアンプは出力600Wあり、音もコスパも抜群です。
車用のアンプを家庭で使う場合は100Vを12Vに変圧するアダプタで駆動することになりますが、通常のアダプタだとせいぜい30~40w位しか電流を流せません。これだとアンプやスピーカーの性能が宝の持ち腐れになるので、amazonで出力360Wの中華アダプタを購入しました。
購入したものの高電力のためクーリングファンが付いていますが、ファンの直径が小さいため音がとても五月蝿いです。
熱をアルミの筐体に放熱する仕組みのようですから、改造して自作パソコン用のCPUファンを取り付けてみました。
冷却フィンに熱を逃せるようになったため、音もかなり静かになって放熱性も抜群になりました。
同じアルミ製なので統一感もあり格好いいですね。電源が入るとブルーのイルミネーションまで点くのでオシャレです。
これで必要なユニットが揃ったので、配線をすることにします。
サブウーハーまでスピーカーケーブルで繋ぐことになりますが、アンプ置き場からサブウーハーの場所は反対側の壁になります。
そのまま床に這わすと脚に引っかかって危険だったりするので、天井を通してウーハー側の壁コンセントから配線を出す事にします。
通常コンセントを弄くるのは火事や感電の危険性があるため、理容師免許では工事出来ません。
しかし直接電線を弄くるのではないのでセーフです。
スピーカーコードが剥き出しのまま壁を這わすのは見苦しいため、ケーブルカバーをして審美的に良くしました。
こちらは現在使っているネットワークレシーバーという物です。ネットワーク時代に対応した多機能アンプで、スマホなどと繋いで音楽を鳴らすことが出来ます。
アンプはサブウーハー出力があった方が便利です。メインボリュームに連動してサブウーハーのボリュームも連動するからです。
利用している音楽ソースはネット配信によるスポティファイというもので、月額980円支払えば4000万曲以上の音楽が聴き放題です。
FMやCDを借りてカセットに録音していた時代から見れば、まるで夢のようにいい時代になった物ですね。
ジャンルや年代は自由に選べ、優先放送と違い、気に入った音楽でプレイリストを作れたり、AIがそれと似たような音楽傾向のプレイリストを作ってくれたりと、色々便利な機能があります。
お店で採用したいなと思う方は、AmazonミュージックやYouTubeミュージックなど邦楽に強い、演歌が充実している、リスニングミュージックが多いとか各社特色があるので、よく流す音楽の目的に沿って選択したらいいでしょう。
配線も終わったので実際にお店に設置しました。
サランネットをスピーカーに被せると店内の内装に上手くマッチしました。
高さ70cm。奥行33cm。内容積57㍑。重さはかなりあり、25キロ程です。
お客様の目についても決して恥ずかしくない、個人的にも上手く仕上がったと思います。
ちゃんと花置きとして機能していますしね。
音が出るのを確認したら、中高域をカットするハイカット周波数や音圧のゲインを調整してチューニング完了です。
調整の注意点として高音がキンキン強いと聞いて疲れるのと一緒で、いい音で鳴るからと低音をボッコンボッコン強調するとお客様が危機疲れして本末転倒になってしまいます。
ゲインはフロントスピーカーと自然と繋がる音量に調整するといいでしょう。
肝心な音の感想ですがビックリするぐらい変化がありました。
今まではスピーカーに音楽が張り付いていたという感じでしたが、立体感を持って部屋全体から聞こえてくる感覚です。豊かな低音で臨場感が増し、お店の空気感が変わりました。
多くのCDにはこんなに低域の音が入っていたのかと思うと驚きです。
懐深いゆったりとした低音がお客様を心地いいリラックスに誘いそうです。
電子音楽などはスピード感溢れ、テンションが利いた低音に思わず踊りそうになります。
技術者としてもご機嫌よく仕事が出来るようになりました。
最初に狙っていた通り、体で聞くという感じです。
今回のプロジェクトにより耳と体で聞くというアトラクション型に変化しました。
ご自身のお店で低音を増強したいと思う場合、
ある程度日曜大工ができればそんなに難しくありませんし、自作すればお店の状況に合わせて大きさや形、色など思い通りに出来る強みがあります。
在来のスピーカーが小さければ小さいほど音の変化の驚かれる事でしょう。
DIYに慣れていない方が作るのは大変でしょうから
市販のサブウーハーを利用する手がありますので、それを設置するのが良いと思います。
これで日技会にて勉強した確かな技術と心地良いサービス、心地良い音楽を提供出来る体験型理容店としてお客様には更に満足していただける事と思います。
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