NRG 日本理容技学建設会
第4回 【人の心をつかむ接客】        
東京本部 林田孝太(神奈川県厚木市在住)  
                                     dnkfg762@ybb.ne.jp
 今求められているサロンは、カットやパーマの技術に優れているのはもちろん、お店の雰囲気やスタッフの対応にも厳しい目が向けられています。
 心の通った接客が注目されている近年、優しく手入れ法を説明してくれたり、笑顔で接してくれるお店を選択する、というように、お客様のニーズに変化がみられるようになりました。理容師、としての魅力や接客技術が集客にもつながるようになっています。
 接客で不快な思いをさせてしまっては、いくらヘアスタイルの仕上がりが良くても、お客様に満足してもらうことはできません。つねにお客様の視点に立ち、お客様一人ひとりのことを考えたコミュニケーション力の向上、ホスピタリティ(おもてなし)がより求められます。お客様にとって、居心地がよく楽しい時間をすごせるお店であることが大切なのです。いろいろ言われている中で、まずは、一番にお客様を心から喜ばせたいとか、楽しませたいと思うこと。もっといえば、いろいろなお店がある中で、せっかく来てくれたお客様を、「心から幸せにしたいと思うこと」が大切だと思います。
 そういった、お客様に喜んでもらったり、楽しんでもらったり、幸せな気分になってもらう、心理テクニックや接客ノウハウを少しずつですがご紹介しようと思います。

chapter1 お客様を虜にする接客法
 
☆気持ちを込める3つのコツ

・お世辞と思われてしまう一番の原因は、気持ちが入っていないこと。
・@感情をのせる
 「わぁ〜」とか「お〜」たか「あ」とか感嘆詞を入れる。店員がきちんとした接客用語でない言葉をあえて使うことで、気持ちが入っているように感じる。
・Aちょっと前姿勢になる
 人は気持ちが入ると、前のめりになります。
・B声を1トーン上げる
 気持ちが入ると、興奮して声が大きくなります。普段おとなしめの接客をしている人が、1トーン上げると、より気持ちが入っているように見えます。

 ☆効果的なほめテクニック

・人にとって『自分の名前』というのはスペシャルな存在
・「珍しい名前」「いい名前」だと思ったら、すぐにほめる。
・「わからない名前」なら、復唱して聞く。
・あまりにも「ふつうの名前」だったら、名前を復唱した後、何かエピソードにつなげてほめる。
 ほめることにより、確実に印象に残りますし、好感をもっていただけます。

 ☆絶対お世辞とは思われないほめテクニック
・「お子さん、よくかわいいっていわれませんか?」
・「よく(人から)、○○って言われませんか?」
 ほめた人の主観ではなく客観的な視点なので、お世辞に思われにくいのです。

 ☆自分自身、いつも明るく、幸せになれる方法

・ほめればほめるほど、自分自身がハッピーになれるのです。
・プラスの言葉を発すれば発するほど、発する人自身がハッピーになります。
・ほめればほめるほど、お客様の喜んでくれる姿をみることができ、あなた自身ハッピーになれる。
・相手をほめるというのは、潜在意識の観点から言えば、自分自身をほめていることになる。
・お客様をほめればほめるほど、意識的にも潜在意識にも、自分自身が幸せになっていくわけです。

 ☆わかりやすい説明ができるようになる方法

・『お客様の話し方に合わせて話す』
・お客様がいつもしゃべっている、慣れ親しんでいる話し方、言葉で話したほうが、お客様にとってはわかりやすいし、あなたの言葉を受け入れやすいに決まっています。たとえば、声が小さなお客様にはなるべく小さな声で話す。声の大きなお客様には、少し大きな声で話す。早口で話すお客様には、同じように早口でしゃべる。ゆっくり話すお客様には、ゆっくりと説明すると言うことです。

 ☆話はオーバーリアクションで聞く!

・特に人から「聞いているの?」とよく言われる人は要注意です!
 人から「聞いているの?」といわれる時点で、相手には伝わっていないという証拠ですからね。
・『お客様にちゃんとわかるように、リアクションをとりましょう!』
・『ちゃんと感情を込めて聞きましょう!』
 楽しそうに聞いてくれていたり、笑顔でうなずくなど、あなたにわかるようリアクションをとって聞いてくれたら、話しやすいですよね。

 ☆オーバーリアクションで聞くことのもうひとつの利点
・感情を込めて話したお客さんのことは忘れないんですよ!しかも話した内容までも!
 たとえばテレビドラマでよく覚えている番組というのは、泣いたり、喜んだり、自分がその主人公の中に入り込んで観たものなどではないでしょうか?
・お客様と話をしているときに、オーバーリアクションで感情を込めて聞けば、お客様が喜んでくれる。
 あなたも、そのお客様のことを忘れないというメリットがある。まさに一石二鳥ですよね!

 ☆待ち時間は長めに伝える?!

・待ち時間は実際より長めに伝えた方がいいです!
・時間がないときは、人はどうしてもイライラしてしまいます。
・長めに伝えた方が実はお客様に感動を与えられます。
・予定時間より早まると、気持ち的には早いと感じてくれるようになるわけです。

 ☆お客様は『わかってほしい!』と思っている!
・お客様と同じように怒ったり、悲しんだり、喜んだり、笑ったりして、共感してくれること、そうするとお客様は「自分のことをわかってくれた」と満足するわけです。
・お客様から身の上相談であったり、いろいろ話を聞くことがあると思います。そのときに大切なのは、何か相談されても、答えを言うことではないのです。答えを言うことよりも、共感してあげることが大切ののです。いま、多くのひとたちが「自分のことをわかってほしい」と孤独感を感じています。
 
だからこそ、お客様が話たことをちゃんと聞いてあげ、共感してあげると喜んでくれるのです。もちろん、専門的な質問にはすぐに答えを言ってもいいのですよ。

 ☆なぜ、何度も同じ話をする人がいるのか?

・なぜ何度も同じ話をするのかといったら・・・
 その人にとってそれが大切だと思っているし、それを聞いてもらいたい、誰かにわかってもらいたいと思っているから話すのです。

chapter2 初めてのお客様への接し方

 ☆苦手なお客様への克服法@

・『相手のバックボーン』を考えれば苦手な部分が気にならなくなってきます。
 もし、まったく愛想のない小学生の男の子がいて、ジュースをあげても無表情だったら、「ありがとうくらい言えよ」と思ってしまいますよね。
 しかし、その男の子のお母さんが二ヶ月前に病気で亡くなったという事実を聞いたら、どうですか?
 その愛想のない表情だって、ちょっと愛おしく思えませんか?愛想がなくたって、嫌な印象を受けなくなるのではないでしょうか?ジュースをあげて何もお礼を言わなかったとしても、「ガンバレな!」とか応援したい気持ちになりますよね。「なんでありがとう暗い言わないんだ」とは間違えても思わないじゃないですか。
 このように相手のバックボーン、その人が育ってきた環境や今おかれている状況などを知ると、嫌な気持ちや苦手意識も変わってきます。
・『お客様のバックボーンを考える』
 苦手なお客様がいたら、あなたから見てその嫌な部分のバックボーンを想像するのです。そもそもその人の生まれてきた環境であったり、育ってきた環境であったり、今置かれている状況というバックボーンから来ているものなのです。

 ☆苦手なお客様への克服法A
・『お客様の見方を変える』
 人の良い部分と悪い部分は見方によって違ってきます。
 「ケチな人・せこい人」は、別の見方をすれば、「お金に対してしっかりしている」ということ。
 「変な格好をしている人」っていますよね?どういうのかはあえていいませんが、別の見方をすれば、「個性的でオシャレ」ですよね。
 空気が読めない人を、「KY」と言いますが、別の見方をすれば「天然」「自然体」ですよね。
 人の気持ちも考えずに、「自分の言いたいことをズバズバ言ってくる人」っていますよね。でも、別の見方をすれば、「今の世の中にはめずらしく、正直な人、嘘をつけない人」じゃないですか。
 「暗い人」は「クール」だし、「ナルシスト」は「しっかり自分に自信を持っている」という素晴らしいことでもあります。
・別の見方、相手をプラスに受け取れる見方をすればいいのです。
 どうしても嫌なお客様と会うとすとれすになります。このようにお客様のバックボーンを考えたり、見方を変えたりしてみてください。そのお客様の印象が変われば、不思議と苦手意識が薄らいでいきますよ。

 ☆あなただけは、お客様をよく見てあげよう!

・見方を変えるというのは、『長所で見てあげる』こと。
 バックボーンを考えるというのは、『その人を理解してあげる』ことです。
・いろんなお店があるなかで、せっかくあなたのお店に来てくれたお客様です。
 誰もが見る悪いところではなく、あなただけは良いところを見るようにしていただきたいですね。
・最初にお客様と会った瞬間から、良いところを見つける癖をつけておくこと。

 ☆人間には『得意な側』と『苦手な側』がある

・実は人間には左右に応じて、「得意な側」と「苦手な側」というものがあります。
・安心する側であったり、落ち着く側であったりするのが「得意な側」なのです。
・@バックを持っている位置を観る。
 人間は無意識のうちに、「苦手な側」にバックを持つことによって、自分の「苦手な側」を守っている。
・A髪の分け目を観る
 髪の分け目がきている位置が「得意な側」の傾向が強い。
・B重心がかかっている位置を観る
 左重心というのは左側に体重をかけて立っている人で、そういう人は左側を守っているので、右側が「得意な側」になります。
 重心がかかっている反対側が「得意な側」になります。
・Cつむじ(毛渦部)を上から観たときに右巻きの人は、左側が「得意な側」です。
 左巻きは右側が「得意な側」になります。
・人間には「得意な側」と「苦手な側」があるのですから、だったら、お客様の「得意な側」で話しかけたほうがいいですよね。お客様の「得意な側」にポジションをとって、商品を説明したほうがお客様は警戒なく話を聞いてくれるものです。

 ☆初めてのお客様の『心を開かせる」テクニック
・あなたの『手のひら』をお客様にみせるということ。
・手のひらを見せるとは、「私はあなたに心を開いてますよ」というメッセージ
 あなたからお客様と話す際は、手振り、身振りしながら、手のひらをできるだけ見せるようにする。そうすると、お客様もなんとなく「この人は安心できるな」
 「僕に心を開いてくれているな」と無意識(潜在意識的)に感じてくれるようになるのです。

 ☆第一印象でガッチリ好感をもたれる3つの方法
・第一印象が悪いと、ついてしまったイメージをひっくり返すのは難しいが、印象が良ければその後あなたがどんな行動をとろうと、最初に受けたイメージのフィルターがかかってくれるというわけです。
・@ピッカピカな笑顔を出す。
・A気持ちの良いあいさつをする。
・Bその人のことを好きになる。
 私達はとかく、お客様に気に入られようとします。
 でも、そうではなく、私達の方から先にお客様をすきになるのです。
 これは職場の人間関係など、すべての人間関係でも言えることです。
 人間関係は鏡写し。あなたがその人を好きになれば、相手も必ず、同じように好きになります。それは意識でなく、潜在意識で、つまり、なんとなく、相手もあなたのことをいいなと思うようになるのです。

 ☆人は見かけで判断するに決まっている!
・「人を見かけで判断してはいけない」と子供のころから教わりましたが、これは、まったくのウソです。人は見かけで判断するに決まってます!
・恐いのは、人というのは見かけで、その人の性格を判断してしまいます。
 制服の汚れ、靴の汚さを見るだけで、その人の仕事に対するだらしなさ、雑さがわかってしまうのです。

 ☆笑顔で話しやすい雰囲気を!
・笑顔の溢れるお店は初めてのお客様でも入りやすいし、ストレスなく店員に声をかけることができます。
・ほかの誰かが出すから笑顔を出すんじゃなくて、あなたから出すようにしてください。
 そして、ほかの人たちに伝染するまで、やり通してくださいね!

chapter3 カンタンに常連客にする方法
 
☆常連客にするために大切な4つのこと
・@そのお客様のことを好きになる
・Aそのお客様のことを覚える
・Bそのお客様のことをとても大切にしているというのを知ってもらう
・Cそのお客様のことをわかってあげる
・「好感を持っている」とか「親近感を感じている」などは、どんどん自分から伝えた方がいい。伝えるときのコツは、ちょっと照れた感じで言うことです。
 照れた感じのほうがお世辞っぽくなく、真実味をまします。

 ☆お客様を覚える
・一番感動を与えるのは『ちょっとしたパーソナルなこと』。
 お客様の趣味嗜好、たとえば子供が小学校に入ったこととか、誕生日とか、最近ハマっているテレビ番組とか、趣味とか、恋人の話とか、一見するとあなたのお店のサービスや商品とは関係ないのないことを覚えているとお客様は喜んでくれます。
・お客様から見て、いろいろなお客様がいる中で自分のことを覚えていてくれた、そんなことまで覚えてくれていたと思えば、とてもいい気持ちになるわけです。なんか幸せな気持ちにもなるんです。それに自分が大切にされているように感じ、お客様も、そのお店や店員のことを大切にしたいと感じるようになるのです。

 ☆お客様を覚える方法なんて簡単!
・本当は「お客様ノート」なんか作らなくてもいいのです。
・お客様のことを「覚えよう、覚えよう」とするのではなく、ふつうにお客様とリアクションをつけて話せばいい。楽しんで感情を込めて聞けばいいだけなんです。そうすると、忘れないし自然に覚えているものなのです。

 ☆常連にする超パワフルな方法
・お客様がお店に入ってきて、あなたと顔が会った瞬間に、超うれしそうに最高の笑顔で、(パァ〜と明るくなるな感じで) 「あ〜、こんにちはー!」「あ〜、中山さ〜ん、お久しぶりです!」「あっ、いらっしゃいませ!西野さん!」とあいさつするということです。
 声を出さなくても、最高の笑顔で会釈したり手を振るのもいいですよ。
・会った瞬間に超うれしそうな最高な笑顔を出されると、お客様はそのお店を『自分の居場所だ』と思うからです。

 ☆『魔法の質問』をすれば、あなたから離れなくなる!
・男性のお客様には好きな男優を、女性のお客様には好きな女優を聞くだけです。
 でも、大切なのは好きな男優ではないのです。好きな男優や女優が誰かなんて、本当はどうでもいいのです。その理由が大切なんです。
 なんで理由が大切かと言えば。
・そのお客様の『そうなりたいと思っている願望』だからです!
 もっと言えば、『人からそう思われたい、そう見られたい願望』なんです。
・”次に来店した時”に、そんな好きな男優の話しなんかしたことを忘れてしまっているときにほめるのです。
・なにげなく話してる中で、「宮島さんって声がいいですよね。なんか男らしくてシブいです。それに、ふつうの人とオーラが違いますよね」などとほめるのです。
・お客様の人からそう思われたい願望をそのままほめているのですから、メチャクチャ喜びますし、そのお客様の心に響くわけです。

 ☆以上です。
・ITの普及により、コミュニケーションが単なる情報やりとりで終わってしまいがちな現代社会において、お客様と1対1で関わりあう私達の仕事は、やりがいのあるとてもすばらしい職業 だと思います。それだけに、お客様とかわす何気ない会話の中にも、繊細で緻密なコミィニケーション能力が求められてきます。
 今、磨いている、技術や感性も、やはりお客様をはじめ、様々な人々とのコミュニケーションを通じてこそ、実っていくものだと確信いたしました。
 思いやりの気持ちを忘れず、お客様の心身共に癒すことのできる、そんな魅力のある理容師めざして、日々精進し続けたいと思います。

参考資料
著者 森下裕道 『心理接客術』 (ソシム株式会社)

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